前編に続き、為替の歴史について解説します。 目次⑥ 1990年~1994年:バブル経済(注2)の崩壊⑦ 1996年頃~:オンライン・トレーデ […]
―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は6月3 日週に2.92円と、その前の週の1.34円から拡大した。週間ベースでは、3週ぶりに反落。ドル円は週初につけた157.47円から米5月ISM製造業景況指数や米4月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数の弱含みを受け、下方向を試した。氷見野日銀副総裁のタカ派発言もあり、6月4日には5月16日以来の155円割れを迎え一時154.55円まで下落。ただし、週後半は市場予想を上回る米5月ISM非製造業景況指数を受けて、買い戻し。7日には、米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が予想外に強く、4日ぶりに157円台を回復、一時157.08円まで上昇した。ただ、失業率が上昇したこともあってその後は伸び悩み、156円後半で週を終えた。
- 6月11~12日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、四半期に一度公表される経済・金利見通しと、ドット・チャート(FOMC参加者のFF金利見通し)に注目。特にドット・チャートは、前回3月に3回の利下げを示唆していたが、米5月雇用統計・NFPなどの強含みを受け、2回以下へ修正される見通しだ。ただ、米5月雇用統計の詳細を踏まえれば、失業率が上昇するなど弱い材料を確認。年1回利下げ予想示唆とタカ派となる場合は、パウエルFRB議長の記者会見でハト派寄りに、年2回利下げ示唆なら、記者会見でタカ派寄りを示し、バランスを取る見通しだ。いずれにしても、利下げバイアスは維持するだろう。
- 6月13~14日開催の日銀金融政策決定会合では、国債買い入れ減額を決定するか否かがドル円を左右しそうだ。日銀の内田・氷見野副総裁はそろって、タカ派姿勢を表明。植田総裁、内田・氷見野副総裁の体制が始動してから、政策変更前に副総裁が布石を打つ傾向を確認しただけに、期待が高まる。今回期末での解散総選挙が見送られたことも、政策変更の追い風に。ただ、国債買い入れ減額の「検討開始」にとどまるリスクにも、留意すべきだろう。
- 今週は、6月10日に日本1~3月期実質GDP成長率の改定値や4月国際収支(経常収支)を始め、6月12日は日本5月企業物価指数、中国5月消費者物価指数と生産者物価指数、米5月消費者物価指数とFOMC政策発表、13日は米5月生産者物価指数、14日には日銀金融政策決定会合の政策発表、米5月生産者物価指数と米6月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。日米の金融政策決定会合を始め、イベントが目白押しだ。日銀の観測報道が交錯すること必至で、乱高下するリスクが高まる。
- テクニカル的に、ドル円は強気のパーフェクト・オーダー(21日から200日など移動平均線が全て上向き)、ダウ理論の上昇トレンド(上昇過程で安値を切り下げず、上方向を維持)に加え、三役好転を改めて形成するなど、地合いは非常に強い。ただし、158円前後では介入が警戒され、且つFedが利下げバイアスを維持するなら、上値が重くなりそうだ。
- 以上を踏まえ、今週のドル円の上値は引き続き介入があったとされる4月29日以降の戻り高値が近い158.50円、下値は5月16日の安値付近の153.60円と見込む。
1.為替相場の振り返り=ドル円、米雇用統計など米指標に反応し155円割れから157円乗せへ乱高下
【5月27日~31日のドル円レンジ:156.37~157.71円】
(前週の総括)
ドル円の変動幅は6月3 日週に2.92円と、その前の週の1.34円から拡大した。週間ベースでは、3週ぶりに反落。ドル円は6月3日、157.47円の週高値を付けた後、米5月ISM製造業景況指数が予想外に50割れを維持するなか、156円台を割り込んだ。6月4日に、氷見野日銀副総裁が。基調的インフレ率がまだ2%に満たないことを示す一方、徐々にその水準に向かっていると述べた上で、「基調的インフレの見極め、物価データだけではなく賃金や起業行動など様々な要因見る必要」と言及。さらに、為替相場の変動が経済・物価に及ぼす影響やその見通しは金融政策を運営する上で「非常に注意を払ってしっかり分析をしなければいけない」と述べたため、タカ派的と受け止められ、ドル円の下落を促した。NY時間では、米4月雇用動態調査(JOLTS)のうち求人件数が市場予想以下だったため、5月16日以来の155円割れを迎え一時154.55円まで下落した。
6月5日に発表された米5月ADP全国雇用者数が市場予想以下で下値を試すかにみえたが、米5月ISM非製造業景況指数が市場予想を上回っただけでなく約2年ぶりの高水準だったため、一時156.40円台へ上昇。6月6日は植田日銀総裁が参議院の財政金融委員会に出席し、「人々の物価上昇予想 2%に達していない」と言及した一方で、国債買い入れ減額が適切との見解を述べるなか、やや変動が激しくなる場面も。ハト派の中村審議委員が「利上げはまだ早い」との見解を示すと、ドル買いにつながった。6月7日は、米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)や平均時給が市場予想を上回ったため、4日ぶりに157円台を回復、一時157.08円まで上昇した。ただ、失業率が上昇したこともあってその後は伸び悩み、156円後半で週を終えた。
チャート:ドル円の4月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)
(出所:TradingView)
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