<テクニカル分析判断> ●短期:下落トレンドが本格化も、短期的過熱から速度調整的反発が先行しやすい ●中期:『中期的天井 & 長期的W […]
<テクニカル分析判断>
サマリー:
●短期:根強い上昇圧力の残存で上値模索は継続も、自律的調整圧力も着実に増幅中
●中期:依然根強い上昇圧力は残存も、自律調整によるピークアウトは着実に接近
先週は「寄付149.10:148.17~149.82:終値149.55(前週比+0.24円の円安)」となり
週足(後掲➋参照)では5週ぶりだった陰線から再びの陽転となった。ただ、前週2.88円
とその前の週の倍近い水準に拡大していた週間レンジは、先週1.65円とこちらは再縮小
に転じており、想定した変動率の高まりは見られず。この値幅縮小を受け前週比での高値
更新は10週連続で潰えたが、本年3月から続く中期上昇トレンドに著変は観測されず、
「依然として根強い上昇圧力が継続中」であることは否定できない。また、10月に入り
指摘し続けているように、月足(後掲➌参照)では「9月の終値(149.34)」が終値ベースで
32年ぶりの高値であった「昨年10月の終値(148.75)」を更新しているためザラ場の高値
(151.95円)の更新も充分に視野に入りうる状況。
但し、上昇/下落の過熱を示唆するRSIやストキャスティクスはかなり警戒すべき高水準
まで上昇(週足RSIは70超)した後、日足や週足では調整的な動きの兆候も既に観測され
始めている。
もちろん数多のテクニカル指標の大半が示すように「上昇圧力の根強さ」は依然として
強力であり今週も「上値トライ継続」の可能性は否定できない。ただし、既述の通り
徐々にではあるものの「上昇圧力の翳り・調整圧力の高まり」も顕現化しつつあるためピークアウトが接近している可能性は常に念頭に置いておく必要があろう。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/10/13のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月弱)の方向性:上昇圧力は残存も上値の重さ/調整圧力が着実に増幅中
〇3月下旬から52MAとほぼ同じ傾きで続いている上昇トレンドは崩れる気配は無く依然と
して根強い上昇圧力が継続中であることは間違いない
●但し、直近2ヶ月間終値で一度も下回れずに強力な支持線となっている21MA(赤い太線)
は今週148.80円超に上昇し現在値との差はさほどなくなった。仮にこの水準を終値で
下回るような局面となれば、中期的なピークアウトに直結する可能性が高まることになる
>>チャートの半ば金色の太い〇部分参照。21MAを終値で明確に抜けると勢いは加速
>>8月末から9月にかけ、ザラ場で21MAを下回る局面があった(緑の枠)が数日後には
その日の高値を更新。しかし、直近の事例では10/3の高値は今に至るも更新されていない
□上値模索の継続は否定出来ないが「ピークアウト(転換点)に着実に接近中」と認識
>>>想定レンジ=今週:146.55~150.90 、今後1ヶ月:141.00~150.90 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSIを付記
中期(1か月~半年程度)の方向性:急伸⇒反落がなくても、自律調整的下落局面は接近中
●ここ3週70に張り付いていたRSIと共に、ストキャスティクスは『高水準で緑線が赤線
を下抜け(直近の黒枠部分=下落サイン点灯)』したとの認識
>>少なくとも(短期的にも)自律的な調整が接近している可能性は高いと判断
□上値模索の継続は否定出来ないが「ピークアウト(転換点)に着実に接近」と認識
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 137.10~153.30 ⇒ 137.70~151.50 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンド開始前に中期的下落を想定
◎上記➊➋と同様にチャートには『ストキャスティクス』を追加した仕様。明確な
サインはまだないが、インジケーターの水準は警戒的高位に接近している最中。
〇昨年10月の水準を超えた9月の終値を確認。当面の上値余地拡大は否定できず。
但し、超長期上昇トレンドが本格化する前に、一旦「緩やかな中期的下落の可能性
は依然残存している」を中期のメインシナリオとして維持
●繰り返しとなるが、その根拠は主に以下の3点(チャートは2012年10月からの推移)
<=2022年10月は「20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る」という過去35年以上
経験したことのない「異常な(上昇の)過熱状態」にあった(金の太い枠部分)
<=一時85超まで過熱したRSIは中立領域に位置(68.7)も圧倒的に低下余地が大きい
=>超異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた軟化漸進を見込む
<現在137.80近辺の[20MA]は仮にUSD円が横ばいでも来月も約1.4円上昇の予定>
◎ただ、その動きも1年以内には底打ちし(超長期トレンドである)「USD高円安」方向
へと徐々に変化してゆく可能性が高いと想定している
>>> 今後1年間の想定レンジ = 135.30~154.50 ⇒ 135.30~153.75 =
<ファンダメンタルズ分析判断:簡略版>
◇先週の米経済指標は、9月生産者物価指数(PPI)や同消費者物価指数(PPI)などのインフレ
データで予想を上回るものが目立った。このため(長期債入札が不調だったことも手伝い)
引き続き、長期債利回りには上昇圧力がかかりやすい状況が続いた。
◆しかし、10/8に勃発したハマスとイスラエルの大規模衝突が「今後の地政学的リスク
(更なる事態悪化)の高まりに繋がる」との見方により、リスク回避的な『質への逃避』の
動きが活発化。これによって安全資産としての米国債への需要も時間が経過するにつれて
高まり、週間ではむしろ長期金利を大幅に低下させることとなった。
◆更に、「米債利回りの上昇は利上げの必要性を減らすかもしれない」・「足許の利回り
上昇が今後の(追加的な)引き締めに影響しうることに留意」といった複数のFRB高官に
よるハト派的(利上げ停止に向けた地ならし的)な発言が散見されたことも影響した模様。
>>指標となっている米10年債利回りは週間で0.2%近く低下(4.801%⇒4.612%)
◆なお、政策金利の動向を反映しやすい2年債利回りは前週に一時5.15%まで上昇した
ものの先週末は5.05%と、2006年7月以来最高だった9/21の5.20%を下回っている。
これは「政策金利の高止まりは長期化するものの、更なる引上げ余地には限界がある」
ことを示唆。更に中東情勢の緊迫化という新たなリスク要因が加わり先行きの不確実性が
大幅に増幅したことで、米景気やインフレの先行きの予測が一段と困難になりつつある。
◆9月上旬までは<米国経済は「ゴルディロックス(適温経済)」にある>をはやして
『リスク選好』ムードが優勢であったが、ここもとの金利上昇に加え中東情勢の緊迫化と
いう重大なリスク要因が加わったことで今後は『リスク回避』ムード加速の可能性あり。
>>>2023年1月からこれまで「USD高円安」をサポートしてきた要因の一つである
『リスク選好』の動きにも暗雲がたちこめ始めていると判断。
□【短期~中期的視座】「USD/円相場の上昇」に対する根強いサポート要因
◎当初想定よりはるかに強い米国経済指標 ⇒「インフレ高止まり」観測の拡大
〇米国の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
>>『タカ派なFRB、ハト派な日銀の明白なコントラスト』のむし返し
⇔ 今後は「欧米のタカ派色希薄化の一方、日銀はハト派色後退」が漸進へ
〇昨今注目度が高まる日米実質金利差ならびに日米短期金利差の更なる拡大と
それに伴う円キャリートレード復活/活発化に対する期待
⇔「欧米の利上げ打ち止め」並びに「日銀の金融政策正常化への漸進」という
かつての「逆行する(金融政策の)方向性」に対する反転が視野に入りつつある中
(食傷気味となった)このロジックは一旦賞味期限切れになると認識
>>中長期的には、折に触れて注目される要因(特に、市場の変動率が低い時)
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●米銀行セクター不安から顕現化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける公算大
>>>過去1年半にわたる利上げの累積効果による景気鈍化は今後本格化へ
⇒米銀の貸出態度は現在加速的に厳格化しており、実際の貸出も昨年11月に
つけたピーク(前年比13.5%増)から、足許では伸びが大幅に低下中。
⇒おそらく今年末には前年比ゼロもしくはマイナス圏に陥るとみられている。
⇒家計の過剰貯蓄も現在のペースで取り崩していけば、年末までには底を突き、
家計の消費ペースはその後大幅にスローダウンする可能性が高い。
>>>2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
●予算成立を巡る米議会運営が困難な状況を増幅
>>>先般の下院議長解任以降、下院は混迷。「11/17に迫るつなぎ予算の期限
切れ⇒政府機関のシャットダウン」のリスクが高まる
●現ペースでの財政赤字拡大はかつての『(貿易/財政n)双子の赤字』を彷彿
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する景気後退リスクは完全には消えず
>>>米債券市場での将来の景気後退を示唆する『逆イールド』は依然継続
>>>『逆イールド』幅は今年3月の最大値(▲1.08%)を7月に僅かに更新
>>>その後、一旦縮小のトレンドに入ったと思われたが、拡大と縮小を交互
に繰り返す展開が続き、解消に向かう明確な気配は未確認だった。が…
⇒米経済の軟着陸シナリオが本当に実現するのなら、近未来の景気後退を示唆
する逆イールドは自ずと解消に向かうはず
⇒3月には「年後半には利下げ」観測から『2年急低下⇔10年緩やかな低下』の
解消経路(パス)だったが、ここもとは『2年横ばい⇔10年急上昇』のパスが出来
⇒この長短金利の跛行的な動きが加速したことにより逆イールドは急速に縮小し
その幅は3月の縮小時を更新していた
⇒但し、中東情勢が急激に緊迫化していることによって、既述の新たなパスにも
ややネガティヴな要素が加わりつつあり、先週は若干ながら再拡大
⇒しかし、現在の米国のファンダメンタルズとFRBの政策変更余地を考慮すれば
この「縮小のパス」に著変は無いと考えられこの加速によって現在の逆イールド
は「解消→正常化」へ向かうこととなるのではないか
⇒もしくは、国際情勢の悪化から米景気後退が視野に入り、再び3月のパスに
回帰するというルートも完全には排除できない
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ低下余地はほぼ無く金利の変化としては「上昇」するしかない
(生保など機関投資家が長期投資対象として充分魅力的な水準になるまで)
>>>7月末の「YCC修正」によって『日本の金利はこれ以上下げられない』が明白に
>>>欧米の利上げが終了すれば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が残存
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本の金融当局にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>但し、当局が定義する「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移
することが重要」、「“過度な”為替変動は好ましくなく、そのような動きには
あらゆる手段を排除せずに対応」といった状況に現在を当てはめるのは不適切。
「“漸進する”円安」に対して「けん制」以上の対応をとるのは中々難しい
>⇔>昨秋3回にわたり実施された過去最大規模の円買い介入は、既述の定義に基づき
「断続的かつ徹底して水準を押下げる強い意志を伴って実施」(前掲➌参照)
□【数年単位の超長期的視座】超長期的に「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
①日本の貿易(国際)収支構造の反転(≒貿易赤字の常態化)
>>>TRADOM内コンテンツ「為替の歴史」&「月足チャート」もご参照ください
②2005~2007年当時の円キャリートレードが復活する可能性(環境)の高まり
>>>潤沢で安定した内外金利差、今後増加が見込まれる対外直接投資や個人による
海外証券投資、更には上記①で明らかになった本邦の「外貨不足」という需給動向
先週に引き続き、今週も中東情勢と米長期金利の動向を睨んだ展開となりそうだ。
先週末、WTI(原油先物価格)は10/8に起きたハマスの奇襲攻撃後の高値で引けている。
中東情勢については、原油市場こそ原油供給不安につながる展開を警戒し始めている
ようだが、株式市場ではそうしたリスクをまだ十分には織り込んでいない懸念が残る。
「サウジアラビアがイスラエルとの関係改善交渉中断を米国に通告」・「イスラエル
がガザ地区へ侵攻すればイランも戦闘へ介入」との報道等もあり、既に好ましくない
動きも出ているため、今後の展開には最大限の注視が必要だろう。
米国長期金利については、先週複数のFOMCメンバーから「最近の長期金利上昇により、
追加利上げの必要性が低下している」との発言が相次いだ。一方、先週発表された9月
19・20日のFOMC議事要旨では、長期金利上昇の影響について詳細な記載はない。
あの段階では米10年国債利回りは4.4%前後で推移しており、長期金利上昇に対する問題
意識は、FOMCメンバー間に足許で急速に広まっている可能性がある。その意味で、10/19
に予定されているパウエル議長の講演内容もまた大きな注目を集めよう。
他方、日本では10/20に9月消費者物価指数(CPI)が発表予定。コアCPI指数については
電力・ガス料金の値下げ継続を受け、前年比+2.7%と1年ぶりに3%割れが予想される。
ただし、トレンドを確認する為には、前2ヵ月続けて前年比+2.0%となったサービス価格
の動向に注目すべきだと考えている。
一方、市場では10/31に発表予定の展望レポートで、「日銀が2024年度の物価見通しを
2.5%超に上方修正する」との見方が広がりつつある。仮に上方修正された場合、市場では
「早期政策修正のシグナル」と受け止められるとみている。
今週発表の9月CPIはその可能性を見極める手掛かり材料の一つとして注目したい。
ファンダメンタルズ分析では足許で円安を支持する要因が圧倒的に多かったにも拘らず、
未だに150円台定着を実現できない展開に個人的には大いなる違和感を禁じ得ない。
また、既述の流れが大きく変化しない限り、今後は益々USD/円の上値追いが困難になって
くるのではないかと考えている。
くり返しとなるが、予算を巡り議会運営の難局は増幅している他、中東情勢不安の高進、
米国内でのストライキ拡大もあって、FRBの追加利上げ慎重姿勢は崩れないはず。
また、10月から再開予定の学費ローン返済を控え、これまで底堅かった消費動向に変化が
見られるのか、9月米小売売上高の結果も注目されよう。消費の勢いが失速するようなら
米経済は減速懸念を強めることとなり、USD/円の重しも増えよう。
その他、米商品先物取引委員会(CFTC)が発表する投機筋のネット・ポジション状況では
円ショート(売り持ち)が10月10日週時点で10万枚近くもの高水準を維持している。
これは、昨年10月の151.95円でUSD/円がピークアウトした時を上回っており、その他
の事例でも自律調整を引き起こしやすい水準だといえる。
高値保合いが続く中、「円買戻しのマグマ」は着実に蓄積されつつあると認識。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに
短期を中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏の
レポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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