目次Executive Summary1. 先週の為替相場の振り返り=ドル円、一時約1カ月ぶりに134円台を回復2. 主な要人発言3. 主な […]
テクニカル分析判断
サマリー:
●短期:依然として根強い上昇局面にあるものの、そのステージは「終盤」の模様
●中期:上昇優勢の展開が再来するも、短期に続き「上昇の過熱」状態に急接近中
先週は「寄付143.46:142.93~145.06:終値144.33(前週比+0.60円の円安)」の
推移を辿り、週足は3週連続での陽線形成となった。ここ数か月「強力な上昇圧力
が根強く残存している証」としていた「前週比でみた下値の切り上がり」は3月の
最終週から14週間にわたってほぼ継続。更に、上値の大幅な切り上げをも示現し
7か月ぶりの戻り高値更新を先週も継続して見せた。
6週前に我々が修正した中短期見通し『根強い上昇圧力は当初の想定より遥かに
強靭であるため、当面は上値トライが主流となる蓋然性が高い』がまさに本格化
したものだと言えよう。
しかしながら、日足での『RSI70超え』が再び出現するなど『上昇の過熱状況』が
改めて高値警戒感を招きつつあり、前週も指摘した通り『今後の更なる上昇には
幾つもの障壁が待ち受けている』。 今後は上昇抑制的な展開が増加しよう。
実際、3週前から2.90円⇒2.65円と一定の変動率を維持していた週間レンジは、
先週2.13円とやや縮小し(長めの上ヒゲと共に)上昇圧力の疲弊を示唆した。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/06/30のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月程度)の方向性:根強い上昇局面にも「終盤」突入の兆候が出来
●黒い〇は天井形成、エンジの〇は底打ちの時点(共に短期的サイン含む)。また、
「ある(短期の)MAがより長期のMAを下回るデッドクロス(以下DC)とその真逆に
あたるゴールデンクロス(同GC)にも一部付与(意味合いは先週分をご参照)。
◆天井形成の場合:①RSIが「70以上」か、その水準に接近している
②その時点のレートが[21MA+4.32%]以上にあるか、その水準に接近している
◇底打ちの場合:①RSIが「30以下」か、その水準に接近している
②その時点のレートが[21MA-4.32%]以下にあるか、その水準に接近している
>>>少なくともチャートに表示した(非常に変動率が高かった)過去1年間は、
ほぼ上記2点の条件において「ピークアウト/ボトムアウト」を形成している
●昨年10/21の『ピーク(151.95)』と今年1/16の『ボトム(127.23)』の下落幅を
ベースとした戻り(反発)の目標値は「50%、61.8%、76.4%」などが一般的
>>『50%:139.59』は5/25に達成(チャートの右から2番目の黒い〇印)
>>『61.8%:142.51』は6/22に達成(「ピンクの太い水平線」のうちの下の線)
>>『76.4%:146.12』は上記「2本の太い水平線:ピンク」のうちの上の線
⇒現在のモメンタム(≒勢い)なら、今週にも到達する可能性は充分ある
●ただし、この上値トライによって、既に警戒レベルに達しているRSI(71.1)も
さらに「上昇の過熱度合い」が高まることは確実な情勢
●また、3本のMAとの上方乖離がかなり大きくなってきていることも併せて、
少なくとも短期的には『上昇局面は終盤に突入しつつある』と判断している
>>>想定レンジ=今週:141.15~146.25 、今後1ヶ月:138.30~148.80 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記
中期(1か月超~半年程度)の方向性:短期に続いて「上昇の過熱」状態が急速に接近
●黒い〇は天井形成(速度調整的サイン含む)、エンジの〇は底打ちの時点を表示。
過去1年強で形成された『中期的に強力な上値抵抗帯』(青い□の帯)の上限を終値で
明確に突破して以降は、調整的な下押しの動きに対しても、既述の『抵抗帯』の中に
入ると強力な押し目買い圧力により直ちに抵抗帯超の水準へ押し上げられる展開。
上昇の勢いは目立って衰えることなく、先週も7カ月ぶりの戻り高値水準を更新。
●モメンタムは明らかに騰勢が優位。しかし[21MA]からの上方乖離([21MA+7.41%]
:146円台前半への急接近)やRSIの水準(67.4)などが着実に要警戒領域に接近。
●RSIは、緩やかながらも着実に上昇を継続し上記水準を回復。昨秋急落時の水準
および“上昇の過熱”を警戒すべき70に接近中で上昇余地は僅少となっている。
●なお、チャートの2本の水平線(ピンク)は短期で説明したもの(以下)と同一。
昨年10/21の『ピーク(151.95)』と今年1/16の『ボトム(127.23)』の下落幅を
ベースとした戻り(反発)の目標値は「50%、61.8%、76.4%」などが一般的
>>『50%:139.59』は5/25に到達済(その後短期的な速度調整を経験)
>>『61.8%:142.51』は6/22に到達済(ピンクの太い水平線のうちの下の線)
>>『76.4%:146.12』は上記「2本の太い水平線:ピンク」のうちの上の線
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 126.90~145.80 ⇒ 128.70~148.80 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~年単位)の方向性:重要な上値抵抗線突破で長期予測も本格的修正へ
●先週も戻り高値更新が続き、6月は幾つかの重要な上値抵抗線を終値ベースで突破
●ただし、既述➊➋と同様に長期にも“上昇の過熱”を警戒すべき要因が増加している
●また、更なる上昇に対してはいくつもの強力な上値抵抗線が控える(チャート右上部)
●傾きをマイルドにした形での「“緩やかな下落トレンド”の可能性は依然残存」を
長期のメインシナリオとしているが昨今の展開を加味し「本格的修正」に着手予定
●昨年10月は20MA+18%と60MA+30%を同時に上回るという未曽有の異常な過熱状態
●一時85超まで過熱したRSIは中立領域に位置(66.3)も上昇よりも低下余地が大きい
●異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた下落先行の展開へ
<現在132.94円の水準にある[20MA]は来月以降も約1.3円/月に上昇する見込み>
>>> 今後1年間の想定レンジ = 125.85~145.80 ⇒ 128.70~148.80 =
ファンダメンタルズ分析判断:簡略版
◎先週は米国の非常に良好な経済指標が多かった(住宅販売・消費者信頼感・
耐久財受注等)ことに加え、ECBフォーラムなどでの米欧中銀高官のタカ派発言を
受け、週を通じて米欧の短期金利を中心に市場金利が上昇する展開
◎パウエルFRB議長・ラガルドECB総裁 VS 植田日銀総裁の発言
>>前2者は共に「年内は数回の利上げが必須」との超タカ派的姿勢を強調
>>日銀植田総裁は相変わらず「現状の緩和政策“維持”」を表明
>>『タカ派な米欧中銀、ハト派な日銀』のコントラストは一段と鮮明に
>>>蒸し返しの材料だが、改めて日本内外の金融政策のコントラストに焦点が
当たり、先週も対USDでは7カ月ぶり・対EURでは15年ぶりの円安水準を更新
●一方で、先週末の米欧経済指標は軟調(市場予想を大幅に下回る)
>>5月の米個人消費支出(PCE)価格指数:前年比+3.8%(4月は同+4.3%)
⇒ 2021年4月以降で最小に(ただ、依然としてFRBの目標(2%)は上回る)
>>また、インフレ調整後の消費支出も市場予想を下回ったため「4・5月の
データを合わせると4-6月期は前期比で消費がかなり鈍化した」との
見方が増加( 消費者はインフレ進行の速度にキャッチアップ出来ず )
>>これを受け金利先物市場では「7月FOMCでの0.25%利上げ確率」が
前日の89.3%から84.3%に低下
>>6月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値は、前年比+5.5%
(3カ月連続で伸びが縮小も『ECBの利上げ見送り』は全く織り込まれず)
●以上を受け、週末の米欧の市場金利は(短期とは違い)中長期ゾーンでは低下
>>将来の景気後退を示唆する長短金利の逆転現象はその幅の拡大が再加速中
◆株式・債券両市場による「景気・金融状況」の現状/先行きの判断に甚大な乖離
>>強気相場入りが鮮明な株式市場(上半期だけで米ナスダック総合は30%超上昇)
⇔ 深刻な景気後退(リーマンショック時に匹敵)を示唆する逆イールド(後掲のグラフ)
□【短期~中期的視座】当面「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
〇欧米の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
⇒『タカ派なFRB・ECB、ハト派な日銀』の明白なコントラストのむし返し
〇昨今相関度が高まる日米実質金利差ならびに日米短期金利差の更なる拡大と
それに伴う円キャリートレード活発化に対する期待
〇相対的な割安感を背景とする「海外勢の“日本株買い/ヘッジの円売り”」
⇒日本との現金利差を考慮すれば、円売りヘッジは経済合理性の高い投資行動
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●銀行セクター不安から顕在化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける可能性大
>>>過去1年の急激な利上げの累積効果による顕現化はこれから本格化
>>>3月に始まった欧米金融機関の破綻などの金融不安的動揺
>>>その後も、足許で下落が目立ち続ける商業用不動産市況
>>>米国の企業倒産件数の急増(5月:前年比 +2,324件/+31%、前月比+27%)
⇒2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性の高まり
>>>将来の景気後退を示唆する米債券市場での『逆イールド』は一向に解消せず
>>>『逆イールド』幅は足許で再び拡大傾向を強めておりその幅は、今年3月の
最大値(▲1.08%)にほぼ面合わせの水準まで拡大(下表)
>>>名目金利も逆イールドも各々『限界的な水準』に到りつつあると判断している
>>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」
>>>株式市場の好調は「米利上げサイクルが終了に近いとの見方」も1つの要因
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ金利に低下余地はほぼ無く変化としては「上昇」するしかない
>>>欧米の利上げが終われば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が急上昇中
>>>為替相場には「“内外のファンダメンタルズを反映”した“秩序ある動き”」が
求められるものの、足許ではそれに逸脱気味の推移が展開中
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>昨秋、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の円買い介入は145円台から
始まり、その後も徹底的に水準を押し下げる強い意志を伴って実施された
>>>先月、日本は「米国の外国為替監視対象国から除外」され、従前よりも市場介入
の自由度・意思決定速度が向上する環境となってきた
>>>円を取り巻くファンダメンタルズや円安進行の速度、さらにその絶対水準を考慮
すれば、本邦通貨当局による『円買い介入』の蓋然性は着実に上昇している
お詫び:今週のファンダメンタルズ分析判断も、簡略版のみと致しました。
なお、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を
中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート
(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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