Weekly Report(9/19):「ドル円はFOMCと日銀金融政策決定会合を挟み上値目線、乱高下のリスクも」
Weekly Report(9/19):「ドル円はFOMCと日銀金融政策決定会合を挟み上値目線、乱高下のリスクも」
安田 佐和子
この記事の著者
ジーフィット為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

アナリストレポート

―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は9月11日週に2.05円と、その前の週の1.85円から小幅拡大した。週ベースでは、続伸。引き続き、米10年債利回りが4.3%へ戻す過程で日米金利差拡大が意識された。9月11日こそ、読売新聞での植田日銀総裁による「物価動向次第でマイナス金利解除も選択肢」との報道や、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の9月FOMCは据え置き、以降の追加利上げは不確実との報道を受け、一時146円を割り込んだ。中国人民銀行が投機的な元売りを阻止するとの声明を発表したことも、円買いを促した。しかし、9月11日以降は米8月消費者物価指数や米8月小売売上高、米8月生産者物価指数、米8月輸入物価指数など米指標を受けて上昇。欧州中央銀行(ECB)が予想外に利上げを行ったものの、利上げ打ち止めを示唆したことも、対ユーロでドルを支えた。ブルームバーグが植田氏のインタビュー内容の火消しに掛かったことも、ドル円の上昇を促した。
  • 今後1週間は、テクニカル的に強気シグナルが継続しており、上値目線の方向に変わりない。上値の目途は2022年11月の戻り高値の148.80円を超えれば心理的節目の149.50円、下値は8月以降のサポートとなっている21日移動平均線が近い146.50円と見込む。ただ、米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀金融政策決定会合次第では、乱高下もありうる。
  • 9月19~20日開催のFOMCでは、WSJ紙の観測記事の通り、金利据え置きが見込まれる。四半期に一度公表される経済・金利見通しでは、年末までのFF金利見通し・中央値を年内あと1回の利上げを意味する5.6%で維持されそうだ。ただし、観測記事によれば、あくまで利上げ余地を確保する狙いで、今後は不確実だといい、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言でその辺りを確認することとなりそうだ。基本的に、経済指標次第の政策運営との姿勢を維持するだろう。
  • 9月21~22日開催の日銀金融政策決定会合では、9月9日付けの読売新聞の植田総裁のインタビュー記事をめぐり、ブルームバーグが9月15日にて関係者の話として、マイナス金利解除に向けた総裁発言と市場の解釈にギャップがあると報じ、早期のマイナス金利解除についてけん制給を放った。ただし、鈴木財務相は、国債の利回りについて市場や海外の動向で決定すると発言しており、岸田政権として円安環境でのイールド・カーブ・コントロール(YCC)が適切ではないと考えている節もある。
  • 従って、植田氏の記者会見ではマイナス金利解除の質問が集中すること必至な一方で、YCC解除へ向けた言質が取れるかどうかで、円買い戻しを誘うか試されよう。

1.前週の為替相場の振り返り=ドル円、重要な米経済指標に反応し一時147.95円まで上昇

【9/11-9/15のドル円レンジ:145.90~147.95円】

(前週の総括)ドル円の変動幅は9月11日週に2.05円と、その前の週の1.85円から小幅拡大した。週ベースでは、続伸。引き続き、米10年債利回りが4.3%へ戻す過程で日米金利差拡大が意識された。9月11日こそ、読売新聞での植田日銀総裁による「物価動向次第でマイナス金利解除も選択肢」との報道や、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の9月FOMCは据え置き、以降の追加利上げは不確実との報道を受け、一時146円を割り込んだ。中国人民銀行が投機的な元売りを阻止するとの声明を発表したことも、円買いを促した。しかし、9月11日以降は米8月消費者物価指数や米8月小売売上高、米8月生産者物価指数、米8月輸入物価指数など米指標を受けて上昇。欧州中央銀行(ECB)が予想外に利上げを行ったものの、利上げ打ち止めを示唆したことも、対ユーロでドルを支えた。

・9月11日は、ドル円は下落を経て下げ幅を縮小。物価上昇など条件次第でマイナス金利解除も選択肢と述べた植田日銀総裁の9月9日付けの読売新聞インタビューに加え、9月FOMCは据え置きとの9月10日付けのウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の記事を受け、ドル円はオセアニア時間に前週末の終値146.78円から大きく窓を開けてスタートを切った。東京時間朝に147.20円台へ切り返すも一時的で、東京時間午後からは下値を広げる展開。中国人民銀行が「合理的で均衡の取れた水準で適切な安定状態を維持出来る強固な基盤がある」、「外為市場の秩序を乱すような当期や扇動的な動きを断固阻止する」との声明を発表したことも、円高要因となった。また、ドイツ証券が日銀のYCC撤廃やマイナス金利解除の予想を前倒したとのニュースが伝わり、円買い戻しが優勢となるなか、約1週間半ぶりに146円を割り込み、一時145.98円をつけた。そこからは切り返し、146.80円台まで戻しつつ146円半ばでNY時間を終えた。

・9月12日、ドル円はジリ高の展開。特に重要指標を予定しないなか、米8月消費者物価指数(CPI)への警戒感を背景に、東京時間から緩やかな上昇を描き、NY時間には一時147.23円まで本日高値を更新した。

・9月13日、ドル円は引き続きジリ高。東京時間で第2次岸田再改造内閣が正式に発足したものの、反応薄だった。また、鈴木財務相が「今後とも経済・物価・市場動向を把握し、的確に対応」、「日銀に与えられた責務をしっかり果たしていただけることを期待」などと発言したが、こちらの影響も限定的。米8月消費者物価指数(CPI)を前に東京時間は147円前半を軸に小動きで、NY時間の米8月CPIの発表を受け、一時147.75円まで3営業日ぶりの高値をつけた。

・9月14日に、ドル円は売り先行後に買い戻し。東京時間に一時147円ちょうど付近まで下落したが、欧州中央銀行(ECB)が予想外に利上げを行ったものの、利上げ打ち止め示唆を声明文で盛り込んだため、ユーロドルが下落しドル高をサポートした。NY時間には市場予想を上回る米8月小売売上高、米8月生産者物価指数のほか、低水準を維持した米新規失業保険申請件数などを受けて買い戻された。ドル円は一時147.56円まで本日高値を更新し、再び小緩みつつ高値圏でNY時間を終えた。

チャート:米新規失業保険申請件数、前週比にて4週連続で減少し約6カ月ぶりの低水準

チャート:米8月小売売上高は前月比0.6%増、市場予想を上回るも増加の7割はガソリン

チャート:米8月生産者物価指数、エネルギーが押し上げ加速

・9月15日、ドルは上値を拡大。9月9日付けの植田総裁インタビューで物価動向次第でマイナス金利解除も選択肢との報道につき、東京時間にブルームバーグが植田総裁発言と市場解釈にギャップがあり、日銀の認識は引き続き概ね変わらないとの関係者の発言を伝えたため、買いが広がった。NY入りにかけては、一時147.95円まで2022年11月以来の高値を更新。ただ、米8月輸入物価指数や8月鉱工業生産が市場予想を上回りつつ、米9月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値と1年先インフレ期待が市場予想以下だったほか介入警戒もあり 米金利上昇の割りにドル円は上げ渋った。

チャート:米9月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値はインフレ期待含め市場予想と前月を下回る

チャート:米8月鉱工業生産は前月比と設備稼働率が市場予想を上回る

チャート:米8月輸入物価指数、市場予想よりマイナス幅を削る

チャート:ドル円の8月以降の日足、米10年債利回り(左軸、緑線)が上昇に転じる動きに合わせ、ドル円は147.95円まで高値を更新

(出所:TradingView)

2.主な要人発言

・9月11~15日までの要人発言を振り返ると、FOMC参加者はブラックアウト期間に入っており金融政策について発言せず。ECB高官の間では、ECBが予想外に利上げを決定するなか、声明文では利上げ打ち止め派を示唆しつつ、ラガルドECB総裁は金利がピークに達したかは明言を控えた一方で、デギンドスECB副総裁は据え置き継続の見方を寄せるなど、見解が分かれた。イングランド銀行の英金融政策委員会(MPC)の間では、マンMPC委員が利上げ継続を主張しつつ、次期副総裁は含みをもたせた。日本からは岸田首相が内閣改造後に賃上げの流れ加速について言及したほか、鈴木財務相が日銀に与えられた責務を果たしてほしいと述べ、円安による物価高が好ましくないとの見方を示唆するメッセージを送った。

3.主な経済指標結果

〇米国の経済指標⇒米8月消費者物価指数(CPI)と米8月生産者物価指数(PPI)の前年同月比は総合がエネルギーの押し上げを受け市場予想を上回りつつ、コアは鈍化をたどった。米8月小売売上高は市場予想を上回ったが、その7割はガソリンによる押し上げが大きく、消費減速を示唆。米新規失業保険申請件数と米8月鉱工業生産などは堅調な内容だった。

〇欧州の経済指標⇒独9月ZEW景況感指数は市場予想と前月から下げ幅を縮小したが、ユーロ圏9月ZEW景況感指数やユーロ圏7月鉱工業生産は前月から悪化し、まちまちとなった。ECBはユーロ圏の経済指標が弱含みを受けながら、市場予想に反し追加利上げを決定。ただし、声明文では利上げ打ち止めを示唆した。英7月失業率は前月から上昇、英7月GDPも市場予想よりマイナス幅が広がり、景気後退懸念が浮上した。

〇日本と中国の経済指標⇒日本はQ3法人企業景気予測調査・大企業全産業景況判断指数が改善したが、8月国内企業物価は市場予想を上回った。また、7月機械受注は前年同月比でマイナス幅を広げた。中国8月小売売上高と鉱工業生産は、それぞれ市場予想を上回る結果となり、同国の景気回復期待を強めた。

〇オセアニアの経済指標⇒豪8月新規雇用者数は市場予想超えだったが、失業率は市場予想と前月通りだった。

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