Weekly Report(2/12):根強い押し目買い圧力を再確認も「ピークアウト接近」の兆候は存続
吉岡 豪麿
この記事の著者
ジーフィット 取締役CAO

国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

マーケット分析

<テクニカル分析判断>   

●短期:依然根強い上昇圧力と共に、149円台半ばの強力な上値抵抗帯も確認

●中期:根強い押し目買い圧力を再確認も「中長期下落トレンド」の再開接近との見立て継続

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先週は「寄付148.32:147.64~149.57:終値149.25(前週比+0.96円の円安)」となり、週足では前週に続いての陽線を形成。これで年明け以降の6週のうち5週が陽線となっており、先週の予測の範囲内とはいえ「USD買い/円売り圧力の根強さ」を改めて認識することとなった。

ただし、先週も指摘した通り、上図に示した(昨年11/13の)ピークアウト前後に「上値抵抗帯」となっていた149円台半ば(上限149.76)は上抜けしておらず、今週以降の推移次第で「今次のピークアウト」が形成される可能性は残存している。

また、2-3週前の足型は、昨年11月20日週と同様の『高値圏で出現した“首吊り線”』(上図:グレーの垂直なカプセル)が2週前から連続で出現しており「(年初来の急速な)反発局面がピークアウト」しつつある可能性が高まっていることを示唆。また、先週要警戒領域に突入したストキャスティクスなどから「“調整波B(反発)⇒調整波C(下落)”開始 (後掲➋ご参照)」の兆しも見受けられる

こうした我々の分析(見立て)が正しければ、(ピークアウトの確認後)「昨年末の直近安値(140.24円)を下回り140円を割り込んでゆく」可能性があり、これが3週前に修正した直近の我々の見通しとなる。更なる詳細については、後掲➋をご覧頂きたい。

なお、年初にわずか4日間で5円超を記録した週間レンジは、5週前3.01円、4週前4.00円、3週前に2.05円、2週前には2.70円と再拡大を見せるも、先週は1.93円と昨年10/23週以来の水準にまで縮小。年明け以降の展開を踏まえれば、上昇方向への息切れ(行き詰まり)の顕現化とも考えられよう。基本的には昨年11月以降続いている「上下どちらにも大きく振れ易い」展開が徐々に落ち着いてくる過程にあると判断している。

以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな視点を中心にご案内。(今号の分析は2024/02/09のNY市場終値をベースに実施)

<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>

➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記

短期(1週間~1か月弱)の方向性:ピークアウトか続伸か、今後のトレンドへの重要な分岐点

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「上値抵抗線に転化したはずの21/52/200の各MA」は全て下値支持線へと再度逆転

また、上昇に転じた21MAは「200MAに続き52MAともゴールデンクロスを形成」している上、2週前の下落局面では「52MAが強力な下値支持線として機能」し、上昇地合いの強さを示唆

これらを受け、相当の上値抑制圧力がかかると想定した「『151.92⇒140.24の下降波』の75%戻し超の水準(149.57)」への上昇が示現も「昨年11月の上値抵抗帯(上限149.76)」は(終値でも)上抜けしていないため、今週以降の推移次第で「今次のピークアウト」が形成される可能性は残存

>>>想定レンジ=今週:146.70~149.70 、今後1ヶ月:142.80~149.70 =

➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSIを付記

中期(1か月~半年程度)の方向性:強力な押し目買い圧力にもピークアウトの兆しは残存

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下落加速の契機となった昨年11月20日週と同様の『高値圏で出現した“首吊り線”』が3週前から連続で出現したことで「(年初来の急速な)反発局面がピークアウト」しつつある可能性が高まっていることを示唆(=高値圏で出現した“首吊り線”は下落局面近辺にあるサインとされる)

RSIは依然上昇余地を残してはいるものの、ストキャスティクスは既に要警戒領域に突入

「(昨年10月~同11月中旬までかなりもみ合っていた)149円台半ばの上値抵抗帯(上限149.76)は相当の上値抑制圧力がかかってくると想定される

先週指摘の通り、先週「1/15週の高値(148.80)」を抜けたため“調整波B?”は後ズレ/上方修正したが(2週連続“首吊り線”が示唆する)「“調整波B(反発)⇒調整波C(下落)”開始の兆し」は依然として有効だと思われる(ただし、149.76を終値で上回ったら本格的な修正に着手予定)

また、こうした我々の分析(見立て)が正しければ、首尾よくピークアウトを迎えた後には、50.0%戻し(139.57)や61.8%戻し(136.65)に向けて、再び下落トレンドに回帰することになろう

<<エリオット波動理論によれば「下降波(C)は下降波(A)の下値(140.24)を下回る」ことで完成するため

>>> 今後6か月間の想定レンジ 136.65~149.70 ⇒ 136.65~149.70 =

➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記

長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンドは現下落トレンドの終了確認後に再開

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想定通り昨年12月は一昨年12月以来の大幅な陰線を形成し、1年をかけたダブルトップ形成を確認すると共に『2022年11月~2023年1月』を除き、2021年1月以降で初めての2カ月連続陰線(下落)を形成することとなった

しかしながら、年明け以降の急反発によって(チャートに記載の通り)「昨年11-12月急落分の約80%を既に回復」しており、長期的な上昇圧力の強さに著変なし

ただし、➋でも言及した通り「中長期下落トレンドは依然存続」と判断している

=>RSI・ストキャスティクスは共に充分な低下余地を残存 (チャート下段)

だが、その動きも2024年中の後半には底打ちし(超長期トレンドである)「USD高円安」方向へと反転上昇してゆく可能性が高いのではないかと想定している

>>>これまでも主張してきた通り、我々は「(数年単位の)超長期上昇トレンドが本格化する前に

『中長期的下落トレンドに入る』可能性が高い」をメインシナリオとして維持

繰り返しとなるが、その根拠は主に以下の3点(チャートは2018年9月からの推移)

<=2022年10月は「20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る」という過去40年以上経験したことのない「異常な(上昇の)過熱状態」にあった

<=一時90近辺まで過熱したRSIは、一旦70.1まで再上昇もその後概ね60台(先週末62.7)で推移

=>超異常状態からの反落だけに20MA突破から60MAに向けた軟化/下落を依然見込んでいる

>>> 今後1年間の想定レンジ = 133.50~151.80 ⇒ 133.50~151.80 =

<ファンダメンタルズ分析判断>

□先週の日米金融市場は「債券利回り(金利)上昇&株式上昇」(下表右部分)

【米国】週間の変化

□主な経済指標:発表された指標自体が少なく、以下を除いてほぼ事前予想通り

〇米1月ISM非製造業景況指数:結果53.4(市場予想52.0)

〇米12月卸売売上高:結果+0.7%(市場予想+0.3%)

●米12月消費者物価指数(前月比/季節調整済み): +0.2%に下方修正(速報値+0.3%)

◇債券利回り:FRB当局者からの「早期利下げに慎重」発言に対し敏感に反応

>10年債利回り:2/2  4.020% ⇒ 2/9  4.195%(前週比+0.175%上昇:1/24以来の高水準)

>2年債利回り :2/2  4.364% ⇒ 2/9  4.499%(前週比+0.135%上昇:約2ヶ月ぶりの高水準)

=>10年-2年の逆イールドは「▲0.304%へやや縮小」(下表)

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◇主なFRB当局者の発言(時系列)

「現時点では今年2ー3回の利下げが適切だと考える」(ミネアポリス連銀カシュカリ総裁)

「利下げを支持するにはさらなるデータが必要」(ボストン連銀コリンズ総裁)

「利下げには忍耐強くなるのが合理的」(リッチモンド連銀バーキン総裁)

>>>揃って、市場が織り込むほどの「早期かつ多数回の利下げ」に慎重な姿勢を示した

>>>こうした状況を受け、市場が織り込む3月の利下げ確率は18%と、1カ月前の64%から大幅に低下5月までの利下げ確率についても58%まで低下している

市場金利上昇にも拘らず、主要3指数は揃って4週連続上昇:3指数の上昇は過去15週中14週目

>NYダウ:+0.05%高(史上最高値更新中)

>S&P500:+1.37%高(終値ベースでも史上最高値更新中)

>ナスダック:+2.32%高(2021年の史上最高値まであと0.42%に接近中)

>>>S&P500構成企業の約2/3の決算が出揃い、10-12月期の増益率は9.0%増と、1月1日時点の予想4.7%増を大幅に上回った。予想を上回った企業は81%と、過去4四半期の平均76%を上回っている

>>>ただし、それでも現在の予想PERや債券利回りに対する株式のバリュエーションが急上昇しており、「割高感」が増幅する中この上昇速度を懸念する声もかなり増加

【日本】週間の変化

◇債券利回り:日銀当局者からは「ハト派発言」相次ぐも、週間では大幅上昇

>10年債利回り:2/2  0.660% ⇒ 2/9  0.720%(前週比+0.060%上昇)

◇主な日銀当局者の発言(時系列)

「マイナス金利を解除しても緩和的な環境が続く」(清水日銀理事)

「マイナス金利解除後もどんどん利上げするパスは考えにくい」

・「緩和的な金融環境が大きく変化することは想定されない」(内田日銀副総裁)

「先行きマイナス金利解除を実施したとしても緩和的な金融環境が当面続く可能性は高い」(植田日銀総裁)

>>>揃って「(現状の)金融緩和環境の長期化」を示唆

◇主要株価指数:揃って反発

>TOPIX:前週末比+0.71%高

>日経平均株価:前週末比+2.04%高

〇株価続伸の背景:

米景気のソフトランディング期待に支えられ史上最高値を更新する「米国株式市場の上昇」

②「10-12月期決算への期待」⇒四半期決算発表内容が好調な銘柄中心に物色対象も広がり上昇

③円安の進行

□FRB高官発言を受け、対主要6通貨での「USD指数は4週連続の上昇」

>>>既述のFRB当局者の「タカ派?」的発言によって「早期利下げ観測の後退」が寄与

⇔ 日銀当局者からの「ハト派?」的発言により金融緩和環境の長期化観測高まる

=>「日米金融政策の方向性にコントラスト鮮明」との思惑が高まる

>>>円は対USDで0.65%下落し、直近6週中5週で下落している

さて、先週は目立った経済指標が少ない中、日米金融当局者の発言内容がUSD円の下落を後押しする結果となりました。そして、今週も(データ次第としながらも)「利下げを急ぐ必要性は低い」との見解を示しそうな複数の米FRB高官の発言が予定されています。1月FOMC後の発言を総括すると、「FRB内では“3月利下げは現実的ではない”」ほか「年内の利下げ回数も市場が想定する6回よりは少ない“2・3回に留まる”」との認識は大きく変わっていない模様です。

他方、先週は少なかった日米の主要な経済指標は一転して目白押しとなる予定。中でも、2/13に発表される米1月消費者物価指数(CPI)や2/15の同小売売上高の結果がFRB当局者の見方を補強する材料となるのかどうかが注目されるところです。

CPIについては総合・コアとも前年比が前月から低下(総合:12月3.4%→2.9%、コア3.9%→3.7%)の予想が現時点では多いようです。しかしながら「米国内のガソリン価格が1月に反発の兆し」や「紅海での武装勢力の攻撃による船舶のスエズ運河航行回避」・「干ばつによるパナマ運河の通行規制」等による「輸送コストの上昇」をインフレ鈍化の妨害要因として、「予想比上ブレ」を見込む向きも決して少なくありません。確かに、予想に反してインフレの鈍化ペースが限定的に留まるようなら、米国の利下げ時期の後ずれ観測からUSD円には上昇圧力(底堅さ)が増幅することになりそうです。また、前週の雇用統計で明らかになった「時間給の大幅上昇」を受けた消費拡大期待も、利下げ時期を巡る思惑に多大な影響を与えるため、小売売上高の結果もUSD買い材料として注目する向きが多いようです。

一方で、(ジーフィット為替アンバサダーの)安田佐和子さんが先週のWeekly Report(2024/02/05)でも言及されていましたが、現在は「極めて局所的な問題」と捉えられがちな米商業用不動産市場の混乱が拡大してくるようなら、米経済に対する楽観的な見方が崩れ、株安・円高が進む可能性も相応にあると思われます。従前より指摘しているように、我々の分析においても『急激な金融引締めの累積効果は、今後顕現化する可能性が高い』ことを主因に、米景気が想定以上に悪化する懸念は払拭できません

2008年に勃発した『リーマン・ショック』の遠因ともいわれる『サブプライム・ショック』が金融市場で問題になり始めた時も、今回のように「極めて局所的な問題」と捉えられ「バケツの中の嵐」と評されたものでした。現在は当時とは比較にならないほど「金融システムの強靭化」が進展していると思料しますが、何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」、『楽観』のし過ぎは禁物です。当面、この問題への警戒は怠れないと思われます。

既述の通り、日米金融当局者の発言内容から両国の「金融政策の方向性の違い(跛行性)」をかねてより強調し、それを『USD買い/円売り』の主因とされる見方は依然として市場には多いようです。しかし、(これも半年以上前から当レポートで指摘し続けていますが)このロジックの構成には「言葉のイメージによる誤解」があるのではないかと危惧しています。

例えば、「今週もUSD円の上昇を見込む『USD円強気派』が、その主因とする『日米金融政策の方向性の違い(コントラスト/跛行性)』を要約」すると概ね以下の2点に集約されます。

  1. 多くのFRB当局者が「相次いで早期利下げに慎重な発言をする」

>>>「米利下げ開始時期の後ずれ観測 → 米金利上昇(?) → 米ドル買い」との受け止め

>>> (昨年末にかけて)市場がかなり前倒しで織り込み過ぎた(低下した)分の金利上昇はあろうがFRBは「次の一手は利上げではなく『利下げ』」であることを既に示唆している

<<< FRBは「既に利下げの議論を始めていた」ことを認め3月のFOMCでは『量的金融引き締め(QT)』のペース減速・早期終了を議論することを表明(拙著Weekly Report 20240115ご参照)

>>>少なくとも、現状において『FRBによる一段の引き締め(政策金利引上げ)の可能性は殆どない』

  1. 先週同様、複数の日銀当局者が相次いで「日銀による金融緩和の長期化観測」をサポート

>>>「日銀によるマイナス金利解除時期の後ずれ観測 → 円金利低下(?) → 円売り」との受け止め

>>> 「金融緩和の長期化利下げ」。現状は「金融正常化への道を模索中」であり『更なる利下げ(マイナス金利の深掘り)』などは論外

<<< 日銀は「マイナス金利の解除を事実上表明」しており、あとは実施時期だけの問題。故に「マイナス金利を解除しても…」とのまくら言葉が常に使われている

>>>マイナス金利導入前と比較して『緩和的な金融環境が継続』されても「更なる利下げ(マイナス金利の深掘り)」はあり得ない

こうした我々の判断をデータにて検証するために、<ファンダメンタルズ分析判断>の冒頭でご紹介した『日米主要市況の終値推移』の表を、以下にてもう一度ご覧ください。

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最初の「➀2023/11/13」は「インフレの高進とFRBの追加利上げ」が懸念され『日米の債券利回り&USD円レートがピークアウトした頃』です。このため、➀では債券利回りとUSD円レートが表中で最も高くなっています。

次の「➁2023/12/13」はその1か月後にあたり「インフレと景気の減速が顕現化」し始め「FRBの早期利下げ期待」が盛り上がり『日米の債券利回り&USD円レートがダウントレンドを辿っていた最中』。このため、➁では債券利回りの大半とUSD円レートが表中で概ね最も低くなっています。

さらに、「➂2024/1/24」は昨年末とは状況が一変した年明け1月も下旬上記➁の織り込み過ぎから巻き戻しが優勢となり、米2年債利回りを除いて全て前月比上昇特に日米10年債利回りは直近2/9とほぼ同水準

以上からもわかる通り、既述1)・2)のロジックから導かれた金利の動きとUSD円レートは殆ど一致しません。むしろ直近はハト派発言にも拘わらず円金利は上昇しており、「金利の絶対水準・日米金利差」が同水準の➂と直近を比較しても「円安方向に傾き過ぎている」ことが見て取れます。

ただ、金利の上下動に関係なく、時を経るごとに上昇している株価が「我が世の春を謳歌」していることだけは誰が見ても明白ですが、これもこのペースで上昇し続けるけることはかなり難しいと考えますが果たして…。

それにしても、「米国経済のソフトランディング」シナリオを背景とした株式市場の絶好調は中々収束の気配がありません。このままの推移が続けば、来年度始の『発射台』が高すぎて、アセット・アロケーターとしては非常に頭の痛いところです。

しかしながら、日米のファンダメンタルズを精査すればするほど今週の結論もここ2週の結びとほぼ同様となってきます。以下にそのポイントのみご案内します。

~「インフレと景気の減速は続くものの、景気は“後退”と言えるほどには落ち込まない」~

まさに、現在米国の株式市場を席巻しているこの『ソフトランディング・シナリオ』の蓋然性は極めて高いと考えざるを得ない状況なのかもしれません。 しかしながら…

Ⅰ.「予想比堅調だが、減速傾向にある景気」 と Ⅱ.「順調に鈍化を続けるインフレ」。かねてより指摘してきましたが、Ⅰ.については➊『急激な金融引締めの累積効果は今後顕現化する可能性が高い』ことを主因に想定以上に悪化する恐れがあると我々は考えています。また、Ⅱ.については➋『インフレが鈍化する中で現在の高い政策金利が維持されれば、金融環境の引き締まり度合いは一段と強まっていく』ことは確実。現在こうした状況下で米国の実質金利の高止まりを危惧する声も高まっています。

とすれば、➌現状において『FRBによる一段の引き締めの可能性は殆どない』はずであり、むしろインフレの再燃を危惧し過ぎて利下げが遅れ(≒➋)、ひいては➊の可能性を益々高めることになるかもしれません。この事態の帰結は、米国金融政策の方向性として当然ながら『USD安要因』となります。

もちろん既述の通り先週のFRB高官の発言によって、これまで市場を席巻していた「早期利下げ観測」はかなり牽制され、巻き戻しの動きを余儀なくされました。しかしながら、既述➊~➌の背景を踏まえると「向こう数四半期でドルが大幅に上昇する余地は殆どない」との結論に達します。こうしたロジックを背景に、我々は「中長期下落トレンドは依然として継続している」との判断を維持しています。

お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心とした見通しについては、ジーフィット為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方はサイト内で、是非ご参照下さい

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