インフレと為替
金 星
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。
外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

為替の仕組み
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インフレ

インフレは一言で説明すると、「需要が供給より多い」状態であり、モノが少ないから物価が上がることです。

基本的には

① 景気が良くなり

② 企業や個人の収益が増え

③ 投資や消費が拡大

④ 需要増で価格が上昇し、インフレが発生します。

良いインフレと悪いインフレ

良いインフレは「景気の拡大をともなうインフレ」ということです。 一方、商品の仕入れ価格の上昇ほど商品価格に上乗せできず、企業の業績が悪くなり、賃金が上がらないのに身の回りの商品が値上がりして家計を圧迫する、といった悪循環をもたらすのが悪いインフレです。

インフレが行き過ぎると、不動産価格の高騰や株価の上昇が起こり、バブル経済が発生します。バブル経済はいつかはじけてしまいますが、緩やかに落ち着かせることが難しく、「バブルの崩壊」によって景気が後退することになります。

一方、デフレの場合、物価が下落するものの企業の業績が悪くなることで、従業員の給与が減り、リストラによる失業者も増えるため、多くの人にとってはマイナス面が大きいといえます。

コロナ禍とインフレ

2020年にコロナ感染と拡大が発生し、コロナ禍が経済を恐慌に落とし入れるのを防ぐために世界の中銀は金利を大幅に引き下げるなど金融緩和策を強化しました。ただ、中銀の緩和策と各国の巨大な景気刺激策により世の中にお金が溢れ、急速にインフレが進みました。パンデミックで供給を大きく減り、人手不足になるなか、ロシアのウクライナ侵攻も物価上昇圧力を強めました。

世界中で急速に進んだインフレ高はスタグフレーション(景気が後退していく中でインフレ、物価上昇が同時進行する現象)の警戒感が高まり、今度は世界の中銀が金融政策を引き締めに舵を切り、利上げに走りました。

インフレと為替

基本的には国内の物価が上昇したら「通貨安」、逆に国内の物価が下降したら「通貨高」になると言われています。

例えば、日本国内でインフレになってモノの値段が上がると、相対的にお金の価値が下がります。これまで1000円で買えたものが、1200円に値上がりしたとすると、同じものを買うためにたくさんのお金を払うので、円の価値は下がっているといえます。円の価値が下がると、円と外貨を交換するときの比率である為替レートにおいても円の価値が下がるため、円安の原因になります。

通貨安になると海外では自国の製品が安くなり買われやすくなります。輸出が大きな割合を示す国(日本など)は通貨安で輸出が増え、景気が良くなりやすいです。一方、輸入企業にとっては輸入商品の値段が高くなり、インフレにつながる一つの要因になりやすいです。

インフレでも通貨安にならないことも

一般的に物価の上昇によって、将来的に金利の上昇が見込まれる場合は、むしろ通貨高になることがあります。最近、世界の主要中銀がインフレ対策で金融引き締めを強めた一方で、日銀は緩和策を維持し、昨年は大幅な円安となりました。

本記事は2023年3月11日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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