
GFIT為替アナリスト 安田佐和子 がお届けするWeekly動画解説! 1週間のドル円相場の振り返りを踏まえて解説します。
2016年下期から2021年下期にかけて約5年間、ドル円の為替相場は1ドル100円〜115円の間で安定的に推移していた。これは1990年のバブル崩壊後にアップダウンを繰り返してきたドル円相場の市況上、最も長期に渡る安定期であったといえる。
この5年に渡る安定期の間、企業は為替変動リスクを大きく意識することなく事業を営む事ができた。ところが一変、2022年に入ってからの急激なる円安はついに一時1990年来の150円を超えた。
これだけの急激な円安が日本企業の業績に与えるインパクトを調査したところ、業種によって大きく命運が分かれる事態が起きていることが分かった。
当然のことながら円安による悪影響を受け易いのは輸入企業である。これまで仕入れていた海外製品の価格が、たったの1年で約30%値上がりしている。一般的に営業利益率が10%あれば優良企業と言われる中、仕入れ価格が30%高騰すれば、経営が一気に傾く可能性があることは容易に想像できるだろう。
多くの中小規模の輸入企業においては、円安に起因する仕入れ単価の高騰のみならず、燃料価格や物流費、人件費の上昇も重なりコストが上昇する一方で、コスト上昇分を顧客に対して価格転嫁することが難しい状況が続いている。実際に、2022年9月の企業物価指数は前年比+9.7%、消費者物価指数は前年比+3.0%となっており、企業の仕入単価の上昇分を消費者に添加できておらず、これらは企業の大きな負担となっている。
東京商工リサーチ が2022年11月1日に発行したレポートによると、2022年10月の「円安」関連倒産は4件発生。2022年の累計は17件となり、過去5年間で最多であった2018年の14件を上回る数値となったと報告している業種別に見ると、9月の円安関連倒産の5件はすべて卸売業であり、10月の関連倒産の4件のうち2件は一次産業であった。
また、直接的に円安が影響する卸売業のみならず、建設業や運輸業においても燃料価格の高止まり、運転手や作業員などの人手不足が重なり業績への深刻な影響が出ている。運輸業でのコスト増は、他業種における商品の仕入価格の上昇にもつながり、日本全国の多くの業種に波及しかねない状況だ。
今後、現在のような円安水準が長期的に継続するならば、輸入企業のみならず、間接的に影響を受ける企業の業績にも影響は避けられない。
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