【あの時あの動き、過去から学ぶ】ワールドカップの法則
山下 政比呂
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

証券会社で株式・債券の営業、米系銀行で為替ディーラー業務(スポット、スワップ、オプション)に従事。プライベートバンクでは、為替のアドバイサーとして円資産からドル建て資産への分散投資を推奨してきたドル高・円安論者。「酒田罫線法」「エリオット波動分析」「ギャン理論」などのテクニカル分析をベースに、ファンダメンタルズ分析との整合性を図り、相場観を構築。2016年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

マーケット分析
ワールドカップ

ドル円相場とワールドカップの関連性は、4年毎の米国中間選挙年に対応しており、「年足は陰線」というアノマリーを見出すことができます。すなわち、変動相場制移行後の米国中間選挙年(=ワールドカップ開催年)は、ドル安・円高傾向に推移する傾向にあり、これまで12年中、8年までが年足が陰線でした。

【ドル円とワールドカップ】

《始値》 ・《高値》 ・《安値》 ・《終値》《主な出来事》

・1974年:(陽線)280.82円・304.90円・274.00円・299.40円(ニクソン・大統領辞任)

・1978年:(陰線)237.59円・242.50円・175.50円・194.30円(カータードル防衛)

・1982年:(陽線)218.75円・278.50円・217.70円・234.70円(フォークランド紛争)

・1986年:(陰線)202.95円・203.30円・152.55円・158.10円(チェルノブイリ原発事故)

・1990年:(陰線)143.70円・160.35円・123.65円・135.30円(パリ合意)

・1994年:(陰線)111.85円・113.60円・96.10円・99.75円(メキシコ金融危機)

・1998年:(陰線)130.55円・147.64円・111.45円・113.40円(ロシアデフォルト)

・2002年:(陰線)131.75円・135.20円・115.50円・118.77円(ユーロ紙幣・硬貨流通)

・2006年:(陽線)117.77円・119.88円・108.97円・119.04円

・2010年:(陰線)93.00円・94.99円・80.21円・81.12円(欧州金融危機)

・2014年:(陽線)105.31円・121.85円・100.76円・119.78円(ロシアのクリミア併合)

・2018年:(陰線)112.63円・114.55円・104.56円・109.69円(米朝首脳会談)

・2022年: 115.08円・151.95円・113.47円・ (ロシアのウクライナ侵攻)

今年の第22回ワールドカップの優勝国は、「開催大陸の法則」からヨーロッパ勢と中南米勢が排除、「バロンドールの呪い」と「EUROの呪い」からアルゼンチンが脱落、「外国人監督の法則」から、カタール、エクアドル、イラン、サウジアラビア、メキシコ、ポーランド、コスタリカ、カナダ、クロアチア、韓国、ベルギーが脱落します。

優勝候補は、アフリカ勢5カ国(ガーナ、カメルーン、モロッコ、チュニジア、セネガル)、日本、オーストラリアとなる可能性が高いことになります。

1.《3964》の法則

サッカーワールドカップは、1930年に第1回大会が開催され、今年2022年は第22回大会となります。ワールドカップで過去2回以上優勝した国の優勝年数を足すと「3964」になる、という法則があります。これまで、9例中、6回当たっているので的中率は67%となります。

・ブラジル:1962年+2002年=3964

・ブラジル:1970年+1994年=3964

・西ドイツ:1974年+1990年=3964

・アルゼンチン:1978年+1986年=3964

・イタリア:1982年+1982年=3964

この法則によると、2014年大会の優勝国は、3964-2014=1950年のウルグアイのはずだったが、結果は、ドイツが優勝でした。

2018年は、3964-2018=1946年の優勝国が最有力候補でしたが、残念ながら、第二次世界大戦直後のため中止でした。今年2022年も、3964-2018=1942年の優勝国が最有力候補ですが、残念ながら、第二次世界大戦中のため中止でした。

次回2026年は、3964-2026=1938年の優勝国イタリアとなります。

2. バロンドールの呪い:アルゼンチン脱落

ワールドカップ「前年度」にバロンドール「世界年間最優秀選手賞」の受賞者を輩出した国は、翌年のワールドカップで優勝を逃す、という呪いです。

2021年のバロンドールは、アルゼンチンのリオネル・メッシだったので、アルゼンチンの優勝の可能性は低いことになります。

3.大陸王者の失墜の理:アルゼンチン脱落

ワールドカップ「前年度」に、欧州大陸と南米大陸の王者となった国は、翌年のワールドカップで優勝できない、という呪いです。

「コパ・アメリカ」の覇者アルゼンチンと「EURO」の覇者イタリアの優勝の可能性は低いことになります。イタリアは出場しないので、アルゼンチンの優勝の可能性は低いのかもしれません。

4.開催国、開催大陸、外国人監督の法則:中東3カ国脱落

ワールドカップは地の利が効いており、欧州大陸で開催されれば欧州の国、中南米大陸で開催されれば南米の国が、優勝する可能性が高いことが確認されています。過去21大会の内、17回までがこの法則に当てはまっており、的中率81%となっています。

今年は、中東カタールで開催されるので、カタール、サウジアラビア、イランの3カ国が優勝する可能性が高いことになります。開催国優勝は21回中6回なので、カタールの優勝の可能性は約30%でしたが、残念ながらグループステージ(GS)敗退となりした。そして、外国人監督の率いる国はワールドカップで優勝できないというジンクスもあり、中東のサウジアラビア、イランの優勝の可能性は低いことになります。

本記事は2022年11月29日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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