―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は5月12日週に3.73円と、その前の週の3.84円から小幅に縮小した。週足では、4週続伸。前週比では0.27円の上昇となった。年初来リターンは7.4%安へ縮小した。米中が閣僚会議を経て、90日間の関税115%引き下げで合意したため、リスクオンが吹き荒れドル円は相互関税発表直後の4月3日以来の149円乗せに接近した。しかし、その後は米国と通商協議を行う韓国が5月5日に為替について協議したと明かしたほか、米4月小売売上高や米4月生産者物価指数(PPI)など米指標が弱含み、ドル円の上げ幅を縮小。前週末の引け際に、格付け会社ムーディーズが米国の格付けを最高位から引き下げたことも、材料視された。
- 格付け会社ムーディーズが5月16日の引け間際に、米国債の格付けを最高位の「Aaa」から1段階引き下げ「Aa1」に。発表直後、ドル円は下落、米10年債利回りは上昇で反応。これで三大格付け会社全てが最高位から引き下げたが、過去2回のドル円の反応はS&Pが格下げした2011年8月に日足、週足で下落、フィッチ・レーティングスが行った2023年8月は日足、週足で上昇した。もっとも、共に年間では上昇。当時は民主党政権で、特に2023年は利上げサイクルにあったため、年間でドル高・円安となったと想定される。足元、トランプ政権で関税措置を講じ、大型減税案の成立を目指すなかでは、ドル円の上昇を促すとは判断しづらい。
- 今回の米国債の格下げは米連邦政府債務と財政赤字の急増が要因とされた。格下げにより、トランプ政権が成立を目指す大型減税案は歳出削減が十分でないリスクも重なり、悪い金利の上昇とそれに伴うドル安、加えて「米国債離れ」、「ドル離れ」への懸念を強めた格好だ。もっとも、3月対米証券投資を踏まえれば、中国が米国債保有高2位から3位に転落した一方、英国が2位に躍り出ている。また、中国のカストディアンと目されるベルギーとルクセンブルクは引き続き米国債を積み増す状況。BRICS諸国も、ドル売り・自国通貨買いが一服したこともあり、米国債保有高が改善、少なくとも「米国債離れ」は確認できていない。問題は相互関税を発表した4月の対米証券投資動向で、各国の対応が分かれうる。
- 一方、今回の格下げにより、財政赤字が膨らむ日本の格付け見直しが入るとの懸念もある。参議院選を控え、消費税減税や現金給付が取り沙汰されることも、懸念につながっているのだろう。ただ、足元で三大格付け会社の日本の見通しは「安定的」。通常、格下げされる場合の見通しは「ネガティブ」であり、すぐに格下げとなるリスクは小さいと言えそうだ。
- 今週は、5月20ー22日にG7財務相・中央銀行総裁会議が控えるほか、23日に赤沢経済再生相が訪米し3回目の日米通商協議が行われる。G7 財務相・中央銀行総裁会議について言えば、ドル円が149円に接近した翌日の13日に加藤財務相がベッセント財務長官と「引き続き為替について協議する」方針を明かした。加えて、23日にベッセント財務長官も出席する日米協議が行われるだけに、為替に関するヘッドラインが飛び出すリスクに備え、ドル円の上値が重くなってもおかしくない。
- 5月19日週に発表となる主な経済指標として、19日中国4月小売売上高と鉱工業生産、ユーロ圏4月消費者物価指数(HICP)改定値、21日に英4月CPIを予定する。22日に日本3月機械受注、ユーロ圏と独の5月総合PMI速報値(製造業・サービス業含む)、米新規失業保険申請件数、米5月総合PMI速報値(製造業・サービス業含む)、米4月中古住宅販売件数が控える。23日には、日本4月全国CPI、米4月新築住宅販売件数を予定する。
- その他、政治・中銀関連では19日にアトランタ連銀総裁、ジェファーソンFRB副議長、ダラス連銀総裁、NY連銀総裁、ミネアポリス連銀総裁の発言を予定する。20日に日銀債券市場参加者会合(銀行等グループ、証券等グループなど)、豪準備銀行の政策金利発表(0.25%の利下げ見通し)、アトランタ連銀総裁、ボストン連銀総裁、セントルイス連銀総裁の発言が控える。20ー22日には、G7財務相・中央銀行総裁会議の開催を挟む。21日には日銀債券市場参加者会合(バイサイドグループ)の他、クリーブランド連銀総裁、アトランタ連銀総裁の発言を予定する。22日には日本の5月分月例経済報告のほか、野口審議委員の発言、ECB理事会議事要旨の公表、NY連銀総裁の発言が控える。23日に3回目の日米通商協議を予定する。
- ドル円のテクニカルは、弱含みへシフト。ドル円は5月12ー13日こそ一目均衡表の雲に突入したが、その後は再び雲の下限を下抜けてきた。何より、5月12日に一時148.65円と約1カ月ぶりの高値をつけたが、2024年12月3日の安値148.64円を抜けたところで押し返されただけでなく、2024年9月と2025年1月の61.8%押しにあたる146.95円も割り込んだ。90日移動平均線が200日移動平均線を下抜け、デッドクロスも形成。5月16日には50日移動平均線に戻りを阻まれた。
- 以上を踏まえ、今週の上値は2024年9月安値と1月高値の61.8%押しが近い147円ちょうど、下値は5月第1週の安値付近の142.30円と見込む。
目次
1.先週のドル円振り返り=米中関税引き下げ合意で149円接近も、アジア通貨高の調整観測で上げ幅縮小
【5月12~16日のドル円レンジ: 144.92~148.65円】
ドル円の変動幅は5月12日週に3.73円と、その前の週の3.84円から小幅に縮小した。週足では、4週続伸。前週比では0.27円の上昇となった。年初来リターンは7.4%安へ縮小した。米中が閣僚会議を経て、90日間の関税115%引き下げで合意したため、リスクオンが吹き荒れドル円は相互関税発表直後の4月3日以来の149円乗せに接近した。しかし、その後は米国と通商協議を行う韓国が5月5日に為替について協議したと明かしたほか、米4月小売売上高や米4月生産者物価指数(PPI)など米指標が弱含み、ドル円の上げ幅を縮小。前週末の引け際に、格付け会社ムーディーズが米国の格付けを最高位から引き下げたことも、材料視された。
12日、ドル円は前週末から窓を開けて急騰。5月10ー22日には、G7財務相・中央銀行総裁会議の開催を挟む。21日には日銀債券市場参加者会合(11日に開催された米中閣僚会議後の11日にベッセント財務長官が詳細を明言しなかったものの、米中は合意に達したと発言したため、前週末の引け値145.30円台から一気に駆け上がり146.10円台でスタートした。ロンドン時間には、ベッセント氏がグリア米通商(USTR)代表とスイスで行った会見で、米中は互いに90日間に及ぶ115%の関税引き下げで合意したと発表したため、147円、148円と大台を次々に突破。中国は一連の報復措置も一時停止や撤廃に動く方針とも示され、NY時間には一時148.65円と相互関税発表直後の4月3日以来の高値をつけた。
13日、ドル円は前日から一転し軟調。東京時間に加藤財務相がベッセント氏と、来週開催のG7財務相・中央銀行総裁会議で為替に関する協議を検討と発言し、147円後半での推移を中心に伸び悩んだ。日銀の主な意見が発表されたが、概ね反応薄。内田副総裁が参院財政金融委員会に出席し、見通し通りなら利上げ、ただし各国の通商政策の為替への影響は不確実性が高いとも述べ、明確にタカ派転換せず、こちらの影響も限定的だった。NY時間には、米4月消費者物価指数(CPI)がほぼ市場予想以下となったが、コアCPIの前年比が市場予想と一致するにとどまったため、一時148.47円まで本日高値を更新するも、その後はマイクロソフトが全従業員の3%を削減する方針と伝わったこともあり、147円前半へ上げ幅を縮小した。
14日、ドル円は売り優勢。日本4月企業物価指数は物価の上振れを示さず上昇で反応も、一時的だった。ロンドン時間に、ドル円は急落。韓国企画財政省の崔志栄・国際経済管理官と米財務省のカプロス次官補(国際金融担当)が5月5日、アジア開発銀行の年次総会中に会談し、為替について協議したと明かした。ニュースを受け、米国との通商協議で為替が議題になるとの懸念が再燃、韓国ウォンが導火線となって円にも買い戻し(ドル円は下落)に火が点き、146円割れの展開。12日にベッセント氏が米中の115%関税引き下げを発表してからの上げ幅を概ね打ち消し、一時145.61円まで本日安値を更新した。しかし、NY時間には。米当局者の話として「米国の関税交渉において、ドル安を考慮しない」とのニュースが伝わり、一時は147円台を回復する場面をみせた。
15日、ドル円は軟調地合いを継続。赤沢経済再生相が来週の訪米を調整し3回目の関税交渉に向かうと報じられ、為替協議への警戒感から売りの流れが継続した。NY時間には、市場予想を下回る米4月小売売上高と米4月生産者物価指数(PPI)を受けて、一時145.41円まで本日安値を更新。パウエルFRB議長が金融政策の見直しなどに言及したほか、供給ショックを受けインフレ再燃への警戒を示したが、影響は限定的だった。米中の貿易担当高官が韓国で開催中のアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合に合わせ、閣僚級会合を行ったと報じられ、6月のトランプ大統領と習主席の誕生日を控えバースデー・サミットの思惑が浮上したが、為替への影響は限定的だった。
16日、ドル円はじり安展開。東京時間で発表された日本1-3月期実質GDP成長率・速報値は市場予想より弱いマイナス成長だったが、むしろ約1週間ぶりの145円割れを迎えた。中村審議委員が引き続き利上げに慎重な姿勢を打ち出しても反応薄。ロンドン時間には、一時144.92円と1週間ぶりの安値をつけた。NY時間からは下げ幅を縮小。米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値で1年先インフレ期待が7.3%と1981年以来の水準へ急伸した結果、146円へ戻す場面がみられつつ、引け際に格付け会社ムーディーズが米国の格付けを最高ランクから引き下げたため、145円後半で週を終えた。
チャート:ドル円の2025年からの日足、米10年債利回りは緑線(左軸)

(出所:TradingView)
2.為替見通し=ドル円、G7財務相・中央銀行総裁会議と日米協議で上値重い
【5月12~16日の為替予想レンジ:142.30~147.00 円】
ムーディーズの米国格下げは、「米国債離れ」と「ドル離れ」の誘因となるか
格付け会社ムーディーズが5月16日の引け間際に、米国債の格付けを最高位の「Aaa」から1段階引き下げ「Aa1」とした。見通しは従来の「ネガティブ」から「安定的」へ修正。他の大手格付け会社S&Pは2011年8月に、フィッチ・レーティングスも2023 年8 月に最高位から引き下げており、世界3大格付け会社全てが米国債の格下げを1段階引き下げたこととなる。
ムーディーズの格下げ発表直後、ドル円は下落、米10年債利回りは上昇で反応した。過去2回の米国債格下げを振り返ると、2011年8月にドル円の下落、2023年8月はドル円の上昇で反応したが、年足ではそろって上昇で終了していた。
チャート:過去2回の米国債格下げに伴うドル円の変動幅

ムーディーズは、今回の格下げについて「米国の債務と財政赤字の急増」を理由に挙げた。実際、バイデン前政権下の2021年3月に成立した1.9兆ドルもの大型景気刺激策のほか、2021年11月のインフラ投資雇用法、2022年8月のCHIPSプラス法とインフレ抑制法も重なり、米連邦政府の歳出額は特にコロナ禍以降で急増した。一連の歳出規模は約29兆ドルと、2023年の名目GDP比で10.4%となる。結果、民間が保有する米連邦政府債務残高はGDP比で99%と、第2次世界大戦直後の1946年以来の水準へ膨らむ。
バイデン前政権での大判振る舞いの歳出増に続き、景気刺激策に伴い蒸発した需要の急回復に供給網の制約、Fedの低金利政策もあって、インフレは2022年6月に前年比9.1%と1981年以来の高水準を記録した。そうした流れを受け米10年債利回りが急伸した結果、米利払い負担も急増し、2023年Q4以降、年率換算ベースにて6四半期で国防費を上回るペースであり、Q1には1兆1,109億ドルに及ぶ。
チャート:米連邦政府債務残高、GDP比

チャート:米利払い負担と国防費の比較

トランプ第2次政権では、関税発動に加え、国際機関や途上国支援の撤退に踏み切るなか、市場では米国が信任を失い海外からの「米国債離れ」や「ドル離れ」を引き起こすとの懸念が強い。しかも、トランプ政権は2017年に成立した税制改正法の延長あるいは恒久化を目指すほか、チップや残業代の米連邦政府からの課税廃止などを目指す。
そこで、5月12日に発表された3月の対米証券投資を振り返ってみよう。日経新聞は5月13日付けにオンライン版で「米国債格下げ、揺らぐ『安全資産』 米へのマネー回帰阻む恐れ」と報じ、中国の米国債離れを強調した。確かに中国の米国債保有高は3月に7,654億ドルへ減少、英国に抜かれ3位へ転落した。しかし、ゴールドマン・サックスが指摘するように、中国がベルギーとルクセンブルクを外貨準備の大規模なカストディアン(保管者)として活用している可能性は見逃せない。両国は2020年1月比で3月までにそれぞれ米国債保有高を94.7%、61.6%増やし、中国の同29%減のマイナス幅を補って余りある。加えて、香港の米国債保有高は3月こそ減少したが、少なくとも足元は2020年以降で最大規模だ。
チャート:日本、中国、英国の米国債保有高、3月に英国が中国を抜き2位に浮上

チャート:英国、ベルギー、ルクセンブルク、香港、台湾の米国債保有高

中国を除くBRICS諸国にサウジアラビア、トルコの2カ国を合わせた米国債保有高をみても、3月は2024年下半期の減少を経て、回復している。米国債離れを語る際には、ドル高と各国通貨安による影響を考慮すべきだが、これらの国々が米国債保有高を減らした理由は、「米国債離れ」より、ドル売り・自国通貨買いの介入が大きい。例えば、インドは2024年7月頃から2025年2月頃にわたりドル売り・ルピー買い介入が取り沙汰され、2025年1月は日経新聞が「新興国に通貨防衛の波 ブラジルは過去最大の介入」と報道したものだ。振り返れば、日本も2022年の9月と10月、2024年の4月、5月、7月にドル売り・円買い介入を実施したことを一因に、米国債保有高は減少した。
トランプ政権が4月2日に相互関税を発表した結果、米10年債利回りは4月11日に一時4.59%と約2カ月ぶりの水準へ上昇した。さらに、約150カ国との通商協議は不可能として、トランプ大統領は5月16日に数週間以内に新たな関税率を通知すると発言し、交渉ができない各国から反発を招きかねない。3月対米証券投資からは、明確な「米国債離れ」を確認できなかった。6月18日に発表される4月の米国債保有動向が「米国債離れ」へのヒントを与えてくれるだろう。
なお、今回の格下げを受け、財政赤字の規模がGDP比250%超である日本に格付けの見直しが飛び火するのではとの懸念が聞かれる。2023年当時は火の粉が降りかからなかったものの、参議院選を控え立憲民主党が食料品の消費税0%の引き下げや、自民党からは小泉元環境相が現金給付について言及する状況。ただ、足元で三大格付け会社の日本の見通しは「安定的」であり、仮に格下げに直面するならば、通常は見通しが「ネガティブ」に引き下げられた後とあって、今すぐ格下げのリスクは小さい。
G7財務相・中央銀行総裁会議と3回目の日米通商協議で、ドル円上値重いか
今週はイベントが盛りだくさんで、5月20ー22日にはカナダのカナナスキスにてG7財務相・中央銀行総裁会議が開催され、5月23日は赤沢経済再生相が訪米し3回目の通商協議を行う予定だ。
足元、米国との通商協議でドル安・アジア通貨高の是正が求められるとの観測が根強い。前回のレポートで指摘したように、台湾が、5月3日に米国との第1回協議を終了させる流れで、5月2日と5日に台湾ドルが対ドルで10%超も急伸。また、韓国政府当局者が5月14日、企画財政省の崔志栄・国際経済管理官が米財務省のロバート・カプロス次官補と5日に会談、「ドル/ウォン市場について協議した」と発言すると、韓国ウォンは対ドルで一時1.9%高を迎えた。
加えて、加藤財務相は5月13日にG7財務相・中央銀行総裁会議に合わせ、ベッセント財務長官と「引き続き為替についての協議を進めることも追求していきたい」と発言した。同日、ドル円が一時148.65円と相互関税発表直後の149円乗せに迫った事情を踏まえれば、G7と第3回日米協議の前に、一段のドル高・円安を回避する上で牽制球を放ったと捉えられるのではないか。
トランプ政権の90日間におよぶ相互関税の停止(一律10%への引き下げ)が7月8日に終了する見通しのなか、インドの当局者は17日に米国と協議を重ねた。そして今週は日本だけでなく、韓国当局者がグリアUSTR代表と会談を予定と現地紙が報じている。
日本側が撤廃を求めている自動車や鉄鋼・アルミニウムに対する25%の追加関税の取り扱いが主要な論点となる見通し。米国側は撤廃には応じないとの主張をしており、日米の立場の隔たりは大きいままだ。
赤沢氏が22日から臨むベッセント氏などとの協議で、日本側は引き続き鉄鋼・アルミや自動車の25%関税撤廃を目指す方針だ。しかし、米国側は相互関税として割り当てた24%のうち、一律関税を除く14%の部分への協議を軸に据え、鉄鋼・アルミや自動車の関税撤廃には消極的だ。日本は前回5月1日に行った第2回協議にて、①米国からの輸入自動車に対する安全審査の簡素化、②米国産の大豆・トウモロコシの輸入拡大、③造船分野での協力――などを提示したとされる。
為替については、米当局者の発言として5月14日に「米国はドル安を模索しない」と報じられ、通貨政策をめぐる約束を合意に盛り込む方針にないと報じられた。ベッセント氏は4月24日の加藤氏との日米財務相会談で「為替について協議した」とXの投稿にて明確化した。また、赤沢氏との協議でもベッセント氏が出席する見通しであり、無事にイベントが通過するまでドル円の上値を抑えそうだ。
ドル円のテクニカルは再び弱含み、重要イベントを挟み神経質な展開へ
5月19日週に発表となる主な経済指標として、19日中国4月小売売上高と鉱工業生産、ユーロ圏4月消費者物価指数(HICP)改定値、21日に英4月CPIを予定する。22日に日本3月機械受注、ユーロ圏と独の5月総合PMI速報値(製造業・サービス業含む)、米新規失業保険申請件数、米5月総合PMI速報値(製造業・サービス業含む)、米4月中古住宅販売件数が控える。23日には、日本4月全国CPI、米4月新築住宅販売件数を予定する。
その他、政治・中銀関連では19日にアトランタ連銀総裁、ジェファーソンFRB副議長、ダラス連銀総裁、NY連銀総裁、ミネアポリス連銀総裁の発言を予定する。20日に日銀債券市場参加者会合(銀行等グループ、証券等グループなど)、豪準備銀行の政策金利発表(0.25%の利下げ見通し)、アトランタ連銀総裁、ボストン連銀総裁、セントルイス連銀総裁の発言が控える。20ー22日には、G7財務相・中央銀行総裁会議の開催を挟む。21日には日銀債券市場参加者会合(バイサイドグループ)のほか、クリーブランド連銀総裁、アトランタ連銀総裁の発言を予定する。22日には日本の5月分月例経済報告のほか、野口審議委員の発言、ECB理事会議事要旨の公表、NY連銀総裁の発言が控える。23日に3回目の日米通商協議を予定する。
ドル円のテクニカルは、弱含みへシフト。ドル円は5月12-13日こそ一目均衡表の雲に突入したが、その後は再び雲の下限を下抜けてきた。何より、5月12日に一時148.65円と約1カ月ぶりの高値をつけたが、2024年12月3日の安値148.64円を抜けたところで押し返されただけでなく、2024年9月と2025年1月の61.8%押しにあたる146.95円も割り込んだ。90日移動平均線が200日移動平均線を下抜け、デッドクロスも形成。5月16日には50日移動平均線に戻りを阻まれた。
2025年の下落トレンドでは、日足のRSI(14日線)が50を超えてくると調整局面に入ってきたが、5月12日には60まで切り上げた。トレンド転換を連想させたが、以降の下落で51.2まで低下。RSIが14日移動平均線を下抜けつつあり、デッドクロスが形成されるならば売りサインが点灯しそうだ。
商品先物取引委員会(CFTC)が発表した投機筋による円の先物ネット・ポジションは、5月13日週時点で17万2,268枚のネット・ロングとなった。前週の17万6,850枚を下回りつつ、15週連続でロングとなる。レバレッジ系(ヘッジファンド勢など)による円先物のネット・ポジション動向は、同週時点で3万5,430枚のネット・ロングだった。4週連続で増加し、2019年9月以来の3万枚乗せを記録した。
タカ派寄りの5月FOMC、米中の関税引き下げ合意を受けたドル円149円接近も、投機筋の円のネット・ロングの縮小も小幅にとどまった。レバレッジ系に至っては、むしろ円ロングが急増。背景には、①米経済指標の減速、②米国との通商協議に伴うアジア通貨安の調整、③日本の長期金利上昇――などが考えられよう。
チャート:投機筋による円のネット・ロング、2週連続で減少も高水準を維持

チャート:レバレッジ系(ヘッジファンドなど)による円のネット・ロングは2019年9月以来の3万枚乗せ

以上を踏まえ、今週の上値は2024年9月安値と1月高値の61.8%押しが近い147円ちょうど、下値は5月第1週の安値付近の142.30円と見込む。
チャート:24年9月からの日足チャート、2024年12月安値は白線、2024年9月安値と25年1月高値の61.8%押しは緑線、21日移動平均線は黄色線、一目均衡表の転換線は赤線、基準線は青線、50日移動平均線は薄青線、下図はRSI。

(出所:TradingView)
3.主な要人発言


4.主な経済指標結果
〇米国の経済指標

〇欧州の経済指標

〇日本と中国の経済指標

〇オセアニア

5.経済指標予定
・赤字が最重要、青字がある程度重要な経済指標 orイベントとなる。

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