―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は12月8日週に2.06円と、その前の週の1.84円から拡大した。週足では、3週ぶりに反発。前週比では0.50円の上昇となり、年初来リターンは前週の1.2%安から0.9%安に縮小した。当該週は、米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、タカ派的利上げとなる思惑が強く、買い戻しが優勢だった。米10月求人件数の増加や、植田総裁の例外的な金利上昇局面では国際買い入れを増額するとの発言も材料視され、一時156.96円と約2週間ぶりの157円乗せに接近。しかし、12月FOMCで公表された経済・金利見通しで2026年と2027年の1回利下げ予想を維持したほか、パウエルFRB議長が利上げの可能性を払拭するなどハト派的となり、売りへ反転。米新規失業保険申請件数の増加も、売りにつながった。
- 12月9~10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場予想通り0.25%の利下げを決定した。また、米財務省短期証券(Tビル)を中心に短期ゾーンの米国債などの買い入れを行う方針を発表。四半期に一度公表される経済・金利見通しでは、2026年と2027年の利下げ予想を1回で維持。成長見通しを上方修正したにもかかわらず、利下げ予想を据え置いた。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、2026年に据え置く方針を示しつつも、利上げに転じる選択肢を除外した。労働市場の下振れリスクに言及した一方で、インフレ警戒をゆるめており、ハト派的な利下げと言えよう。
- 今週は、12月16日に米11月雇用統計と小売売上高、18日に米11月消費者物価指数(CPI)と、重要指標が相次ぐ。米11月雇用統計は、非農業部門就労者数(NFP)と失業率が9月公表分からやや弱含む見通しだが、米11月小売売上高とCPIは堅調な数字が見込まれている。もっとも、2026年1月FOMCでは据え置きが織り込まれており、週末には日銀金融政策決定会合も控える。よほどのサプライズがない限り、ドル円の動意は限られたものにとどまりそうだ
- 植田総裁率いる日銀は12月18~19日の日銀金融政策決定会合で、0.25%の利上げを行い無担保コール翌日物金利を0.75%に設定する見通しだ。1995年9月以来の高水準に引き上げられることになる。既に中立金利の最新の推計について公表されない方針と報じられており、植田氏による市場との対話が試されよう。しかも、足元でブロック豪準備銀行(RBA)総裁や、シュナーベル欧州中央銀行(ECB)理事が2026年の利上げも辞さない構えを打ち出す状況。植田氏は、ドル円だけでなく、クロス円での円安是正を見据えたコミュニケーションが求められよう。
- ドル円は強い地合いから、引き続き後退した。一目均衡表の三役好転を始め強いサインを維持する一方で、これまでサポートされてきた21日移動平均線が抵抗線に転じつつある。一方で、一目均衡表の転換線を回復して12月8日週を終えたほか、10月6日と10月20、21日の安値を結んだトレンドラインと、一目均衡表の基準線を明確に下抜けられていない。日銀金融政策決定会合での植田総裁の会見が、今後の方向性を決定しそうな雲行きだ。
- 12月15日週の経済指標は、15日に日銀短観、中国11月小売売上高と鉱工業生産、米12月NY連銀製造業景気指数、16日はユーロ圏、独、米の総合PMI(製造業・サービス業含む)速報値、ユーロ圏と独のZEW景況感調査、米ADP週次の全国雇用者数や米11月雇用統計、米11月小売売上高を予定する。17日は日本10月機械受注、英11月CPI、ユーロ圏11月消費者物価指数・改定値、18日はNZQ3GDP、米新規失業保険申請件数、米11月CPI、米12月フィラデルフィア連銀製造業景気指数が発表される。19日は日本11月全国CPI、米12月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値が控える。
- その他、政府・中銀関連では、米重要指標と中銀イベントが目白押しだ。12月16日にはミランFRB理事とクラリダ元FRB副議長の対談、ウィリアムズNY連銀総裁の発言、17日は米20年債入札、ウォラーFRB理事を始めNY連銀総裁、アトランタ連銀総裁の発言、18日にイングランド銀行と欧州中央銀行(ECB)の政策金利発表、19日には日銀金融政策決定会合と植田総裁の会見を予定する。その他、政府・中銀関連では、8日に米3年債入札、ハセットNEC委員長の発言、9日に豪準備銀行(RBA)の政策金利発表、植田総裁の講演、米10年債入札、10日にはラガルドECB総裁の発言、カナダ銀行の政策金利発表、FOMCの政策金利発表とパウエルFRB議長の会見、11日には日本20年利付国債入札、スイス国立銀行の政策金利発表、ベイリー英中銀総裁の発言、米30年債入札、フィラデルフィア連銀総裁の発言、12日にはクリーブランド連銀総裁とシカゴ連銀総裁の発言が控える。
- 以上を踏まえ、今週の上値の目途は心理的節目の 157.50円、安値は10月6日安値と11月20日高値の半値押しにあたる153.50円と見込む。
1.ドル円振り返り=12月FOMC前に約2週間ぶりの157円に接近も、ハト派的利下げで上げ幅縮小
【12月8~12日のドル円レンジ:154.90~156.96円】
ドル円の変動幅は12月8日週に2.06円と、その前の週の1.84円から拡大した。週足では、3週ぶりに反発。前週比では0.50円の上昇となり、年初来リターンは前週の1.2%安から0.9%安に縮小した。当該週は、米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、タカ派的利上げとなる思惑が強く、買い戻しが優勢だった。米10月求人件数の増加や、植田総裁の例外的な金利上昇局面では国際買い入れを増額するとの発言も材料視され、一時156.96円と約2週間ぶりの157円乗せに接近。しかし、12月FOMCで公表された経済・金利見通しで2026年と2027年の1回利下げ予想を維持したほか、パウエルFRB議長が利上げの可能性を払拭するなどハト派的となり、売りへ反転。米新規失業保険申請件数の増加も、売りにつながった。
8日のドル円は、売り先行後に買い戻し。日本Q3実質GDP成長率・2次速報値が下方修正されマイナス幅が広がり、10月実質賃金も10カ月連続でマイナスのところ、東京時間の序盤こそ一時154.90円まで週の安値を更新した。しかし、ロンドン時間からは買い戻しが優勢に。米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、タカ派的利上げになるとの思惑から米金利が上昇するなか、買いが入った。NY時間には、青森県東方沖で今年最大規模の地震発生を受けて一旦売りが入る場面もみられたが、その後は一部で日銀の利上げ見送りや支援へ向けた財政拡大の思惑もあり、一時155.99円まで本日高値をつけた。
9日のドル円は、大幅続伸。東京時間の序盤に156円台を回復しつつ、155円後半での推移が続いたが、ロンドン時間から上値を切り上げる展開に入った。植田総裁が院予算委員会での答弁で、長期金利が例外的に急上昇する場合には機動的に国債買い入れの増額などを行うとの見解を改めて示したことが意識され、156円半ばへ上昇。英フィナンシャル・タイムズ紙でのイベントに登壇した植田氏が「国内の物価と賃金の動向には十分な勢いがあり、負のショックがインフレに大きな影響を与えることを防いでいる」、「円安がインフレ期待を変化させる可能性」などと発言すると、一旦は上げ幅を縮小した。この間、高市首相が投機的な動向も含め過度な変動や無秩序な動きには「必要に応じて適切な対応を取る」と述べたが、特に材料視されず。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が、12月FOMCで0.25%利下げを行うが、今後の利下げには慎重になる可能性と報じたことが一部で取り沙汰されるなか、NY時間には買いが再燃した。米10月求人件数が市場予想を超えたことも後押しとなり、一時156.96円と約2週間ぶりに157円乗せが視野に入った。
10日、ドル円はもみ合いを経て売りへ反転。10月企業物価指数が市場予想と一致するなか、東京時間は前日の上げ幅を縮小する動きが入り下落したものの、そこから買い戻しが入るなど、FOMC前にいったり来たりを経て、NY時間に入り売りが再燃した。FOMC発表直後は、一時156.70円台へ上昇も、売りへ反転。短期ゾーン米国債買い入れ発表がサプライズとなり売りに傾いたほか、2026年と2027年の1回利下げ予想維持も、材料視された。パウエルFRB議長が会見で労働市場の下振れリスクに言及したことも売りを招き、156円を割り込み一時155.80円まで本日安値を更新した。
11日、ドル円は続落。12月FOMCの流れを受け継ぎ売りが入り、早川元理事が「日銀は今月会合後も複数回の利上げへ、ペースは半年ごと」との発言も意識された。米新規失業保険申請件数の増加も売りを後押しし、155円を割り込み一時154.95円まで本日安値を更新。しかし、月曜につけた週の安値154.90円に届かず、155円割れでは押し目を拾われ155円後半へ切り返す場面もみられた。
12日、ドル円は買い戻し。来週に米11月雇用統計、小売売上高、CPIを控え、模様眺めの展開となった。片山財務相が「かじ取りを誤るとデフレに戻ると日銀と共通認識」と語ったとの報道もあり、日経新聞が12月に日銀は利上げと報道も影響は限定的。NY時間に一時156.13円まで本日高値を更新した程度にとどまった
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