Weekly Report(2/16)「ドル円は仕切り直し、所信表明で高市首相の財政姿勢を見極めへ」
安田 佐和子
この記事の著者
トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

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―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は2月9日週に5.39円と、その前の週の2.79円から拡大した。2025年4月7日週以来の大きさとなる。前週比では4.55円の下落となり、大幅反落。年初来では2.6%安と、再びマイナスに転じた。衆院選で自民党が歴史的な大勝を収めたが、総選挙後に高市首相が食料品の消費税率ゼロの実現に向け新規国債を発行しない、片山財務相も赤字国債に頼らないなどと財政拡張路線に踏み込まない姿勢を打ち出したため、ドル円は衆院選前の上昇を打ち消す展開。米1月雇用統計が市場予想を上回ったものの、直後に売り買いが交錯しレートチェックの噂が浮上したが、過去分の下方修正もあって買いの流れは続かず。むしろ、米新規失業保険申請件数や米1月消費者物価指数(CPI)などが市場予想以下となり、売りを後押しした。
  • 自民党が衆院選で大勝した一方、ドル円では財政拡張路線の修正観測から「セル・ザ・ファクト」が進んだ。今後の焦点は2つで、1つ目に2月20日予定とされる高市首相の所信表明で財政方針がどう示されるか。食料品の消費税率ゼロへ向けた財源確保のほか、利払い増を踏まえプライマリーバランスを踏まえた財政規律の方向性を修正するか、見極めとなりそうだ。2つ目に日銀審議委員人事があり、野口・中川両委員の後任案が俎上に載る見通し。2人のうち、リフレ派の指名が1人にとどまる、あるいはゼロとなれば、1月日銀金融政策決定会合の「主な意見」でタカ派姿勢を強めた日銀を容認する姿勢と受け止められうる。
  • 米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比13万人増と予想の6.6万人増を大きく上回ったが、年次基準改定で過去分が大幅に下方修正され、雇用の強さは表面的との見方が強い。NFPのうち、業種別では教育・健康に集中し、建設は暖冬、製造は関税発言による在庫積み増しが寄与した。失業率は4.3%へ低下したものの、企業都合の失職者が増加し、労働市場の弱さも示唆される。発表直後のドル円は上昇後に反落した。米1月CPIは総合・コアとも鈍化し、FF先物市場は年内2回の利下げ見通しを維持。一時は年3回の利下げ予想が50%に上昇し、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長退任後の利下げ見通しに変化が生じつつある。
  • ドル円のテクニカルは、1月28日以降の上昇を概ね打ち消し、一目均衡表の雲の下限を下抜けた。21日移動平均線が50日移動平均線を割り込むなど、デッドクロスも形成。RSI(14日)でもデッドクロスが成立しつつ、2月13日時点で35.98と、割安の節目30手前にあり、152円割れを試す余地がある。とはいえ、衆院選前のドル円のロングが一旦吐き出されたと考えれば、ここからは高市首相の所信表明などにらみ、財政政策スタンスの見極めに入るのではないか。
  • 2月16日週の主な経済指標は、16日に米国やカナダ、中国(春節、23日まで)が休場のなか、日本Q4実質GDP成長率・速報値、17日は英1月失業率、ユーロ圏と独の2月ZEW景況感指数、米2月NY連銀製造業景気指数、18日は日本1月貿易統計、英1月CPI、米12月耐久財受注と鉱工業生産を予定する。19日は日本12月機械受注、豪1月失業率、米新規失業保険申請件数、米2月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米12月貿易収支、20日は日本1月全国CPI、ユーロ圏と独、米の総合PMI速報値(製造業、サービス業含む)、米12月個人消費・所得、PCE価格指数、米Q4実質GDP成長率速報値、米2月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値が控える。
  • その他、政府・中銀関連では、16日にボウマンFRB副議長の発言、17日は豪準備銀行の金融政策決定会合の議事要旨公表、片山財務相がイベント出席、バーFRB理事とサンフランシスコ連銀総裁の発言を予定する。18日は首相指名選挙により高市第2次政権が発足する見通しであるほか、NZ準備銀行の政策発表、米20年債入札、1月分のFOMC議事要旨公表が控える。19日は日本20年利付国債入札、米30年債入札、アトランタ連銀総裁やミネアポリス連銀総裁、シカゴ連銀総裁の発言、20日はダラス連銀総裁とアトランタ連銀総裁の発言などの予定が並ぶ。また、20日は高市首相が所信表明を行う可能性がある。
  • 以上を踏まえ、今週の上値は2025年10月安値と1月高値の38.2%戻しが近い154.80円、下値は心理的節目の150.50円。


【2月9~16 日のドル円レンジ:152.27~157.66円】

ドル円の変動幅は2月9日週に5.39円と、その前の週の2.79円から拡大した。2025年4月7日週以来の大きさとなる。前週比では4.55円の下落となり、大幅反落。年初来では2.6%安と、再びマイナスに転じた。衆院選で自民党が歴史的な大勝を収めたが、総選挙後に高市首相が食料品の消費税率ゼロの実現に向け新規国債を発行しない、片山財務相も赤字国債に頼らないなどと財政拡張路線に踏み込まない姿勢を打ち出したため、ドル円は衆院選前の上昇を打ち消す展開。米1月雇用統計が市場予想を上回ったものの、直後に売り買いが交錯しレートチェックの噂が浮上したが、過去分の下方修正もあって買いの流れは続かず。むしろ、米新規失業保険申請件数や米1月消費者物価指数(CPI)などが市場予想以下となり、売りを後押しした。

9日のドル円は、買い先行後に失速。自民党が結党以来で最多の316議席を獲得した結果、ドル円は財政拡張路線に突入するとの思惑から、一時157.66円まで週の高値をつけた。もっとも、前日に片山財務相が市場と対話する意思を示したほか、高市首相も食品消費税率ゼロに向け新規国債を発行しない意向を表明していたため、上げ幅を縮小。加えて、三村財務官や木原官房長官が円安けん制を行ったため、軟調に転じた。加えて、スターマー英首相の側近辞職を受け辞任問題が再燃しポンドドルが下落するかたちで、クロス円でドル円も押し下げられたほか、中国が同国内の銀行に対し、米国債保有の抑制を勧告したと報じられ、ドル売りにも繋がった。高市首相が会見で、「財政の持続可能性を実現するマーケットからの信認を確保していく」と発言したことも、材料視。NY時間には156円を割り込む展開を迎え、ハセットNEC委員長がCNBCとのインタビューで雇用が小幅に減少する可能性を言及したこともあって、一時155.52円まで本日安値をつけた。

10日のドル円は売り継続。東京時間に、日本12月実質賃金が発表され12カ月連続でマイナスとなり、一時156.29円まで本日高値を更新するも、その後は売りに圧された。3月末に任期切れを予定する野口審議委員に加え、6月末に予定する中川審議委員と合わせ、同意人事案を25日に提示するとの報道が飛び出し、リフレ派2人が指名される可能性が取り沙汰されたが、市場への影響は限定的。NY時間には、米12月小売売上高など米指標が弱く売りが年内2回の利下げ期待が高まるなか、ラトニック商務長官が「ドルが現在の水準にあるのは、自然なこと」と発言したこともあって、ドル円は一時154.06円まで本日安値をつけた。ベッセント財務長官、米中関係について「非常に落ち着いた状況にある」と発言すると、下げ渋りをみせた。

11日のドル円は下値を拡大。ドル円は東京市場が休場のなか、前日の弱い米12月小売売上高などを受け年内2回の利下げ期待が高まったこともあって、米1月雇用統計を控え売りが先行し、152.80円台まで下落した。NY時間には、トランプ大統領、密かにUSMCAの離脱を検討との報道には反応薄。米1月雇用統計発表後は、市場予想の2倍に及ぶ非農業部門就労者数(NFP)の伸びに加え、失業率の改善もあって、ドル円は1円も急伸し一時154.65円まで本日高値を更新。しかし、直後に急激な下げに見舞われ、レートチェックなどの噂が飛び交うなか、じり安を迎え一時152.55円まで切り下げた。

12日、ドル円は売り買い交錯。ドル円は東京序盤、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙が米中間選挙を控え、米中首脳が貿易戦争休戦を最大1年間延長する見通しと報じたことで、一時153円半ばまで買われた。同水準では売りに圧され、152.27円まで週の安値を更新。ロンドン時間に入っても153円割れでは押し目を拾われる展開で、NY時間入りには一時153.75円まで本日高値をつけた。もっとも、米新規失業保険申請件数が市場予想より弱く、153円を割り込んでNY時間を終えた。

13日、ドル円は買い先行後も失速。東京時間は買いでスタート、高市首相の経済ブレーンとされる本田元内閣参与が3月利上げの可能性は低いとするロイターのインタビューも材料視され、153円前半へ切り返した。もっとも、田村審議委員が「この春にも、『物価安定の目標』が実現されたと判断できる 可能性が十分ある」などと発言すると、伸び悩み。ロンドン時間に入ると買いが再燃し、一時153.67円まで本日高値を更新するも、NY時間には米1月消費者物価指数(CPI)が市場予想以下となり失速、153円割れで週を終えた。

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