―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は1月26日週に3.26円と、その前の週の3.62円から小幅縮小した。前週比では、0.95円と続落。年初来では1.2%安と2週連続でマイナスだった。週初は、1月23日の日銀金融政策決定会合・植田総裁会見後の日米“協調行動”への衝撃が燻り、売りが優勢。トランプ大統領がドル安容認と受け止められる発言を行ったこともあり、一時152.09円と25年10月29日以来の安値をつけた。もっとも、その後はベッセント財務長官が米国によるドル売り・円買い介入について「断じてない」と完全否定。加えて、米財務省が発表した為替報告書で、日銀の金利正常化に関する文言が削除されたため、154.80円まで切り返した。
- ドナルド・トランプ大統領は、ケビン・ウォーシュ元FRB理事を次期議長に指名した。過去はインフレ警戒で「タカ派」とされたが、実際には危機時の緩和に反対せず、近年はAIによる生産性向上を踏まえ利下げに前向きとされる。QEには慎重で、ベッセント財務長官と思想的に近く、FRB改革や財務省との連携強化を重視する点も共通する。就任後は①柔軟な利下げ、②バランスシート縮小、③AI時代の供給力評価が柱となる見通し。ただし上院承認にはパウエル議長の刑事告発問題の解決が前提となり、トランプ大統領の対応が鍵となる一方、NY連銀のレートチェックは米財務省の指示とされ、ベッセント財務長官の存在があることは間違いない。
- ベッセント財務長官は米国によるドル売り・円買い介入を「断じてない」と完全否定した。ただし、将来の介入には含みを残した。為替報告書では「日銀の引き締め」文言を削除する一方、円安は金利差と新政権の財政拡張が要因と指摘し、総選挙後の財政路線に釘を刺した形だ。同時に、日銀の利上げを促す意図もうかがえる。トランプ大統領は日本や中国の通貨安を批判し、ドル・インデックスは2022年以来の安値に沈んだが、対円でのドル高是正に満足しているとは言い難い。むしろベッセント氏の発言は、ドル全面安を避けるための火消しとみられる。仮にNY連銀が日本と協調してレートチェックを行ったのであれば、米国が見返りとして日銀の利上げなどを求める可能性が残る。
- ドル円のテクニカルは、21日と50日移動平均線が下向きに転じた。しかし、1月30日のドル円の切り返しで、25年10月6日安値と1月14日高値の半値戻し(154.15円)を達成。38.2%戻しの水準も1月29日からサポートに変化しており、今週の米1月雇用統計や衆議院選を控え乱高下するリスクに留意したい。
- ドル円のテクニカルは、1月23日の急落を受け三役好転が消滅したほか、21日移動平均線、50日移動平均線、一目均衡表の雲の上限を破り、弱気に傾いた。今週はつなぎ予算の期限切れを1月30日に控えるほか、介入の実績状況を確認することになり、ドル円は引き続き不安定に推移しそうだ。
- 2月2日週の主な経済指標は、2日に米1月ISM製造業景気指数、3日に米12月雇用動態調査(JOLTS、求人件数など、政府機関閉鎖継続なら発表見送り)、4日にユーロ圏1月消費者物価指数・速報値、米1月ADP全国雇用者数、米1月ISM非製造業景気指数を予定する。5日には日本30年債入札、米1月チャレンジャー人員削減予定数、米新規失業保険申請件数、6日に米1月雇用統計(政府機関閉鎖継続なら発表見送り)、米2月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。
- その他、政府・中銀関連では、2日に1月分の日銀「主な意見」、アトランタ連銀総裁発言、3日に豪準備銀行の政策金利発表、ボウマンFRB副議長とリッチモンド連銀総裁の発言、5日にイングランド銀行と欧州中央銀行(ECB)の政策金利発表、アトランタ連銀総裁の発言、6日に増日銀審議委員の発言、8日に衆議院総選挙の投開票が控える。
- 以上を踏まえ、今週の上値は21日移動平均線が近い156.70円、下値は25年10月6日安値と1月14日高値の38.2%戻しが近い152.90円と見込む。
1.ドル円振り返り=トランプ発言で152円割れ迫るも、ベッセントの介入否定で154円台へ切り返し
【 1月26~30日のドル円レンジ:152.09~155.35円】
ドル円の変動幅は1月26日週に3.26円と、その前の週の3.62円から小幅縮小した。前週比では、0.95円と続落。年初来では1.2%安と2週連続でマイナスだった。週初は、1月23日の日銀金融政策決定会合・植田総裁会見後の日米“協調行動”への衝撃が燻り、売りが優勢。トランプ大統領がドル安容認と受け止められる発言を行ったこともあり、一時152.09円と25年10月29日以来の安値をつけた。もっとも、その後はベッセント財務長官が米国によるドル売り・円買い介入について「断じてない」と完全否定。加えて、米財務省が発表した為替報告書で、日銀の金利正常化に関する文言が削除されたため、154.80円まで切り返した。
26日のドル円は、買い先行後に失速。前週末に日銀金融政策決定会合を経た植田総裁会見直後、そしてNY時間にNY連銀のレートチェック観測を受け急落した反動で窓を開けてスタート、まもなく一時155.35円まで週の高値をつけた。しかし、その後は売りに押され、2025年10月6日安値と1月14日高値の半値押しを抜け、一時153.30円まで本日安値を更新した。
27日のドル円は急落。ドル円は東京時間からゆるやかに買い戻され、一時154.88円まで本日高値をつけた。もっとも、ロンドン時間に154円半ばから153.10円台へ急落。特にレートチェックなどの観測は聞かれず、切り返すかにみえたが、疑心暗鬼となったマーケットは徐々に売りが優勢となった。米1月消費者信頼感指数が市場予想を大きく下回り、かつ雇用DIも弱い結果だったことも売りを後押しし153円割れ。そのままズルズルと下落するなか、NY引け間際にトランプ大統領がドル安は「すばらしい」と発言すると一段安を迎え、一時152.09円と約3カ月ぶりの安値をつけた。
28日のドル円は、買い戻し。ドル円は下値を拾う動きから東京時間早々に153円台を回復した。ただ、買い戻しの流れは限定的で、以降は152円半ばでの推移を継続。もっとも、NY時間にベッセント財務長官がインタビューでドル売り・円買い介入を現時点で行っているかとの質問に「断じてない」と明言すると、ドル円は153円半ばへ急伸した。さらに、FOMCの声明文が公表されると、「足元数カ月で雇用に下方リスクが強まった」との文言削除を確認したことでタカ派と判断され、一時154.05円まで本日高値を更新。ただ、パウエルFRB議長が会見で利上げの可能性を排除したため、大台を維持できずにNY時間を終えた。
29日、ドル円は軟調。ドル円は売りが先行し、東京時間の序盤に152.70円台へ下落した。そこから買い戻されつつ、153円を上下する展開。ロンドン時間からは買い戻しが再燃し、NY時間入りには一時153.54円まで本日高値を更新したが、一目均衡表の雲の下限で上値が重くなった。NY正午には、金先物など相場全体が急落した流れを受け、153円を割り込み一時152.68円まで本日安値を更新した。米財務省が為替報告書の最新版を発表、日本に対しては日銀の利上げ要請と対ドルでの円安是正に関する文言が削除されたが、ドル円への影響は限定的だった。
30日、ドル円は大きく買い戻し。東京序盤から1月東京都区部消費者物価指数(CPI)の伸び減速を受けて買いが優勢となり、152円後半からロンドン時間入りにかけ154円台を回復した。154円半ばで上げ渋るかにみえたが、何度も153円後半での買い需要を確認すると、NY時間には米12月生産者物価指数(PPI)の加速もあって、上げ幅を拡大。米株相場の下落などを受け上げ幅を削る場面があったが154円割れを回避すると、引けにかけ買いが強まり一時154.80円とほぼ高値引けした。
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