Weekly Report(8/18)押し目買い/戻り売り双方の強力な圧力により『147円台中心の保合い』が継続か?
吉岡 豪麿
この記事の著者
トレーダム 取締役CAO

国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

マーケット分析

<テクニカル分析判断>   

●短・中期:「終値ベース147円台での膠着」を打開するキッカケ待ち

□8/4週:「寄付147.27:146.61~148.08:終値147.72、前週比+0.36円の円安)

前週末にかけての軟弱な展開が継続/先行も、根強い押し目買い圧力によりやや反発。しかし前週に確認された『強力な戻り売り圧力』で上値トライは封じられた格好となり、上値も限定的なった

この結果、週間変動幅は1.47円と前7/28週の3.66円から大幅に縮小

■8/11週:「寄付147.57:146.20~148.50:終値147.18、前週比▲0.54円の円高)

◆8/4週同様、戻り売りvs押し目買いの強い圧力を確認。具体的には「①52週MAと21週MA+2.16%ラインでの上値抵抗」と「②4/22の底打ち以降に形成された緩やかな上昇トレンドライン(その下には21週MAが控える)での下値支持」が意識された

この結果、週間変動幅は2.30円と前8/4週の1.47円から拡大

<USD円にポジティヴな要因>

直近17週の「上昇サイクル」(図中:太い破線囲み)は、急伸すると必ず速度調整を伴うものの、緩やかな上昇バンド内での展開であり<テクニカルな堅調地合いや『中期上昇トレンド』が崩れたとまでは言えない=『緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンド』を維持>

=>このため、図中の「サポート(下値支持)とレジスタンス(上値抵抗)の水準」も段階的に切り上がっている

=>現状は52週MA(148.65@8/15)未満ではあるものの、明確に21週MA(145.65@8/15)超の水準を上回っている

◇7/28週の「週足では非常に稀な3円超の上ヒゲ」は、2022/10/17週の場合<21週MA+7.41%の“上昇の過熱”水準を大きく超えただけでなく、同+9.87%水準に迫るほど“上昇の過熱”を観測:後掲➋のチャートご参照

=>ただし、明確に21週MA(145.65@8/15)超の水準を上回っている現状ではあるが、52週MA(148.65@8/15)未満であり「過熱感は全くない(RSIやストキャスティクスも中立水準)

<⇔>

<USD円にネガティヴな要因>

RSI(49.7@8/15)は中立水準にあり上下どちらにも振幅する可能性あるもストキャスティクスにはピークアウトの兆候が増幅

=>『中期トレンドは4/21週に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中』との認識に懸念台頭

上図:既述の中期時間軸と同様に

◆しかし3/28以来となる150円台後半を記録した直後の8/1には3.33円もの長大陰線を形成した上、7/7以来維持していた21日MA超の水準を終値で下回ったことで、テクニカルな堅調地合いにも重大な懸念が台頭

=>その後の2週(11日)間、21日MA超の水準を終値で回復したのは僅か1日のみとなり「21日MAはレジスタンスに転化した可能性」高まる

<⇔>

◇ただし、上記は図中の緩やかな上昇バンド内での展開であり(中期時間軸と同様に)<テクニカルな堅調地合いや『中期上昇トレンド』が崩れたとまでは言えない>

=>4/22の底打ち以降「上昇サイクル」(図中:エンジの破線囲み)は、急伸すると必ず速度調整を伴うものの『緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンド』を形成

=>週足とは逆になるが「21日MAラインでの上値抵抗」と「4/22の底打ち以降に形成された緩やかな上昇トレンドライン(52日MAと同水準)での下値支持」が意識されており、日足でも上下に大きく振れにくい状況

◇また、1)RSIは既述の急落から日を置かず底打ちに転じた後、50近辺で保合って上昇余地を残存

2)ストキャスティクスは急落から程なく緩やかながらも上昇へ転じている

=>『中期トレンドは4/22に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中の可能性が高い』との認識を依然として維持

以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り

既述の通り、戻り売りvs押し目買いの強い圧力が中短期双方の時間軸で確認されており「現在は、上下双方に振幅し辛い状態」。ただし、懸念はあるものの『中期トレンドは4/22に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中』との認識を依然として維持

=>中期上昇トレンド継続の判断に著変はないものの、ここ2週で高まりつつある懸念を念頭におきつつ、変化を先取りしやすい短期時間軸のトレンド判断においては「中立」スタンスを基本としたい

以上を踏まえ、引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を維持した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目している

150.0021週MA+3.09%

149.10円=21週MA+2.46%

☆148.65=<52週MA> ☆

147.75円=<21日MA>

146.55円=21週MA+0.69%

145.95円=21日MA▲1.23%

☆145.50円=<21週MA> ☆

144.60円=21日MA▲2.16%

>>>上記③(上方)⑦(下方)が「抜けると加速する」と思われる水準

~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2025/8/15のNY市場終値をベースに実施) ~

以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数

➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等

短期(1週間~1か月)の方向性:2つのMAに挟まれ動きづらく、保合い継続

上図は直上掲載分の期間を倍に拡大。コメントについては既掲のものをご参照下さい

戻り売りvs押し目買いの強い圧力が中短期双方の時間軸で確認されており「現在は、上下双方に振幅し辛い状態」。ただし、懸念はあるものの『中期トレンドは4/22に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中』との認識を依然として維持

=>中期上昇トレンド継続の判断に著変はないものの、ここ2週で高まりつつある懸念を念頭におきつつ、変化を先取りしやすい短期時間軸のトレンド判断においては「中立」スタンスを基本としたい

>>> 想定レンジ=今週:145.50~148.65 、今後1ヶ月:143.70~150.90

➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等

中期(1か月~半年程度)の方向性:2つのMAに挟まれ膠着。動意の契機待ち

上図は冒頭掲載分の期間を2倍にしたもの。コメントについては既掲のものをご参照下さい

戻り売りvs押し目買いの強い圧力が中短期双方の時間軸で確認されており「現在は、上下双方に振幅し辛い状態」。ただし、懸念はあるものの『中期トレンドは4/21週に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中』との認識を依然として維持

=>中期上昇トレンド継続の判断に著変はないものの、ここ2週で高まりつつある懸念を念頭におきつつ、変化を先取りしやすい短期時間軸と同様に「中立」スタンスをトレンド判断の基本としたい

>>>今後6か月間の想定レンジ = 139.45~153.90⇒139.45~153.90

➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記

長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンドに曙光の一方、懸念も残存

◇3ヶ月連続で下値を切り上げた7月は、一気に20ヶ月MA超を回復する大陽線を形成。陽線は3ヶ月連続となり、懸念が広がっていた数年単位の「超長期上昇トレンド判断」に再び明るさが見え始めた

◇緩やかに上昇に転じたRSIに続き、下降中だったストキャスティクスが上昇サイン点灯。依然として懸念は残るも「超長期上昇トレンド継続」に曙光あり

<⇔>

◆8月初日から大きく急反落し、再び20ヶ月MA未満と地合いの改善は確認できず。依然として、上値が重いとの懸念は払拭できない

>>> 今後1年間の想定レンジ = 138.60~156.75 ⇒138.60~154.80 =

<ファンダメンタルズ分析判断>

先週の日米金融市場の変化(下表右端):世界的にリスクオン展開加速

米国:9月利下げの織込み進みリスクオン展開が再加速

◆日本:欧米のリスクオンに追随。出遅れ解消で上昇を牽引

◆USD円:利下げ織込みから短期金利低下、USD指数・USD円も弱含み

前半のテクニカル分析では、<戻り売りvs押し目買いの強い圧力が中短期双方の時間軸で確認されており「現在は、上下双方に振幅し辛い状態」。ただし、懸念はあるものの『中期トレンドは4/21週に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中』との認識を依然として維持>との結論にしました。

ただし、引き続き以下の留意点を掲げています。

<日足(21日MA)・週足(52週MA)双方で上値トライを封じられ、テクニカルな堅調地合いにも重大な懸念が台頭

=>中期上昇トレンド継続の判断に著変はないものの、ここ2週で高まりつつある懸念を念頭におきつつ、変化を先取りしやすい短期時間軸と同様に「中立」スタンスをトレンド判断の基本としたい>

一方、ファンダメンタルズにおいては、月初の「雇用統計ショック」ともいえるリスクオフ展開を金融市場はしのぎ切り、米政権からの「FRBへの利下げ圧力が高まった」ことを背景に、ここ2週間は一転して「(9月以降の大幅な利下げを織込んだ)リスクオン展開が急加速」しました。

先進国/新興国を問わず、グローバルに株価指数が高値更新を続ける中、「出遅れ」が指摘されて久しい日本株にもその波が大きく波及しています。その結果、先週、1年1カ月ぶりに日経平均株価が最高値を更新するなど日本株の相対的な上昇度合いが目立ちました。

ただ、これまでも繰り返し指摘してきましたが、これは特に日本固有の株式の買い材料があったわけではなく「世界的な循環物色の一環」として海外資金による買いが今回の急上昇を主導/演出したものとみられます。

この他に、先週の米国市場では、これまで主流だったマグニフィセント7に代表される超大型成長株への集中物色から出遅れ株へ物色を分散する動きが見られました。久々に(株価上昇局面で)「S&P500均等ウエイト指数(500銘柄の時価総額比率が均等になるように調整した指数)がS&P500指数をアウトパフォームした」のです。

この現象は「株価上昇の持続性」という観点からは非常に好ましい動きと言えますが、いつも申し上げているように(活況な局面だからこそ)「市場全体が買われすぎ状態になっていないか」をチェックする必要があります(怠れません)。

実は、先週のS&P500指数の予想PER(株価収益率)は、昨年末のピーク(22.6倍)を上回り、一時23倍に迫ったのです。また、日本のTOPIXの予想PERも15倍を超えてきており、過去10年の平均(約14倍)を明確に上回っています。その他、ドイツ、フランス、イギリスなど欧州の主要市場の予想PERも足元で大きく切り上がってきています。

既述の通り、金融市場のリスク選好度合いが高まっている主因として『FRBの利下げ再開への期待』が大きく高まってきていることが挙げられます。

FF金利先物市場では「9月のFOMCで利下げが実施される確率が9割超」と見込まれており、更に「2026年末までには更に4回強の追加利下げ」が織り込まれているようです。

しかしながら、7月のNY連銀期待インフレ率(5年先)や7月のPPI(生産者物価指数)など、直近で発表されたインフレ指標は市場の事前予想(期待)を大きく上回っており、(これらを受けて)FRB高官の一部からは「早期利下げに慎重な見方」が出ていると伝えられています。我々も、現在の市場は「利下げを過度に織り込み過ぎてはいないか」との懸念を持っています。

こうした状況下、今週後半(8/21-23)のジャクソンホール会議におけるパウエル議長の講演がいやが上にも市場の注目を集めることに疑問の余地はありません。はたして、今回は、今後の金融政策についてどのようなメッセージを発信されるのでしょうか。

振り返れば、2022年と2023年の同講演においては『やり遂げるまでやり抜く』とインフレファイターとしてのFRBの決意を明確に表明しました。そして、昨2024年には『政策を調整(転換)する時が来た』と次月9月の利下げ開始を事実上予告(⇒初回から0.5%の大幅な利下げを断行)しました。

今年は市場の見方として以下の2つに大別されるようです。

➊『利下げ再開はデータ次第』として、これまでと同様に曖昧なメッセージとなる

➋『(雇用や物価の安定が示されるならば)利下げも一つの選択肢』との見解を示す

⇒(金融市場が)9月利下げをほぼ100%織り込む現在の状況で(6月FOMC後の会見で夏場のインフレ加速に警告を発していたパウエル議長が)仮にタカ派的な姿勢を打ち出せば、金融市場を混乱の渦に落とし込みかねない。このため「市場との対話」を重視(忖度)したメッセージとする

上記のように『タカ派的姿勢』を打ち出すことはその影響を考えればほぼあり得ないと思われますが、➋のように「利下げに含み」を持たせず(これまでと同様に)➊のニュアンスでの発言となれば、少なくとも現在の過度な利下げ期待は一旦修正を迫られることになりそうです。

既述の通り、トランプ大統領を始めベッセント財務長官など政権中枢からの利下げ圧力の高まりは昨今凄まじいものがあります。そんな状況下で(来年5月で任期を満了する予定の)パウエル議長が政権の批判/(利下げ)圧力をどう躱してゆくのか?

個人的には過去3年と同様(旗幟を鮮明に)「中銀の独立性がいかに重要かを強調」して頂きたいと希望しています。

今後とも「過度に予断を持たず変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続」して金融資本市場全体を引き続き注視してゆこうと考えています。

お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOMユーザーの方々はサイト内で是非ご参照下さい。

<(※):ジーフィット株式会社は2024/10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名を変更しました>

                              2025/8/18

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