トレーダム為替ソリューション 【AI為替リスク管理システム】

  • Weekly Report(11/18):自律的速度調整を交えつつも、中長期上昇トレンドは着実に進展
    吉岡 豪麿
    この記事の著者
    トレーダム 取締役CAO

    国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

    マーケット分析

    <テクニカル分析判断>   

    短・中期:適度な自律調整を交えつつ上昇余地を確保。上昇トレンドは着実に進展

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    □11/11週は「寄付152.64:152.61~156.75:終値154.32(前週比+1.74円の大幅円安)」の推移

    前週比1.74円と大きく円安が進展し、2週連続での陽線を形成

    上図の通り「上値の切上り」は9週連続に延伸し堅固な上昇トレンドを示唆

    ただし、実体に比べて上ヒゲがかなり長い上に、21週移動平均+4.32%の水準で一旦頭を押さえられた(ピークアウトした)格好

    ⇒ここ数週指摘しているように、短期的過熱による自律的速度調整が先週も見られた

    <⇔>

    ただし、こうした自律的速度調整によって「短期的上昇の過熱」は概ね解消しており、その後の上昇余地も着実に確保

    また、3週前の『十字線』により波乱含みとした前週の3.39円に続き、先週の週間変動幅は4.14円と更に拡大した

    なお、上掲チャートの「強調ポイント」は以下3点

    ・緩急交えた「上値の切上り」は9週連続に延伸し、堅固な上昇トレンド継続を示唆

    ・本年初の「①⇒(1)への踊り場移行」と同様に、「②⇒(2)は、更なる上昇前の健全な(上昇余地を蓄積する)“足踏み段階”」として位置付けられる

    ・予想通り、52週MAと21週MAは、前週ごく僅かではあるがデッドクロス(以下D.C.)を示現

    ⇒但し、今回のD.C.は『下落圧力の高まり』を意味せず、<むしろ「その後の上昇加速」の契機となる可能性すらある>との指摘が顕現化(後掲➋週足チャートにて詳述)

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    また、既述の<短期的過熱による自律的速度調整が先週も見られた・更なる上昇に対する健全な(上昇余地を蓄積する)“足踏み段階”」として位置付けられる>状況は、以下の短期時間軸でも明確に確認できる。以下そのポイント

    9/16以降の「直近1年で最も力強い上昇軌道 (赤い上昇カプセル)」から3週前にはみ出した(青の塗りつぶし)ことにより、「上昇モメンタム(勢い)の衰え/上昇ペースの鈍化」が一旦目立った

    (週足よりも変化が早いため)「高水準領域に入りつつあるRSI・ストキャスティクス」は『上昇の過熱』から一旦ピークアウトしていた

    < ⇔ >

    買われ過ぎ領域に接近していたRSIは中立水準へ低下し、ピークアウトから低下が進展していたストキャスティクスでは「底打ち/上昇加速のサイン」が点灯

    更に、2週前には21日MAと200日MAもG.C.が示現

    「21日・52日・200日の移動平均線が全て“上昇”」に転じ全ての時間軸でMAが上昇。更に実績値は全MAより高い水準を維持し続けており、テクニカルな地合いはかなり強固

    以上から導き出された<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り

    ここ数週、折に触れて見られる自律的速度調整により「短期的上昇の過熱」はほぼ解消

    =>>> むしろ、RSIやストキャスティクスでは今後の上昇加速余地が依然残存の状況

    上昇トレンドが継続している状況に著変はなく、上昇のペースは(適度な自律調整を交えつつも)今後徐々に加速の可能性あり

    引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目

    ① 158.10=21週MA +5.55%

    ② 157.05=21週MA +4.95%

    ③ 156.15=21週MA +4.32%

    ④ 155.25円=21週MA +3.69%

    153.45円=21日MA

    ⑥ 152.55円=21週MA +1.86%

    >>>(先週よりは落着くものの)「比較的高水準の市場変動幅が継続」と予想

    ~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2024/11/15のNY市場終値をベースに実施) ~

    以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数

    日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等  

    短期(1週間~1か月)の方向性:自律調整を交えつつ上昇サイクルは着実に進展

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    上図は直上を1年間に延長したもの。コメントは既掲のものをご参照下さい

    ここ数週、折に触れて見られる自律的速度調整により「短期的上昇の過熱」はほぼ解消

    =>>> むしろ、RSIやストキャスティクスでは今後の上昇加速余地が依然残存の状況

    □上昇トレンドが継続している状況に著変はなく、上昇のペースは今後緩やかに加速の可能性

    >>> 想定レンジ=今週:153.30~157.95、今後1ヶ月:151.50~159.00=

    週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等 

    中期(1か月~半年程度)の方向性:速度調整を交えつつ上昇トレンドは着実に進展

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    上図は冒頭掲載の14ヶ月分を2.5年分に延長したものコメントは既掲もご参照下さい

    ここ数週、折に触れて見られる自律的速度調整により「短期的上昇の過熱」はほぼ解消

    =>>> むしろ、RSIでは今後の上昇加速余地が依然残存の状況

    なお、注目していた52週MAと21週MAは11/4週にデッドクロスを示現

    ⇔但し、図中にもある通り週足(中期時間軸)でのデッドクロスは「底打ち⇒上昇への転換」の契機となる場合が多く「下落圧力の高まり」を意味するとは言えない

    図中デッドクロスの「2023/3/20週」は、<130円割れで当時の底打ち後、11月にかけて“150円台への大上昇相場”の起点>に位置しており、2週前のデッドクロスは<むしろ「その後の上昇加速」の契機となる可能性>を指摘していた

    =>>>実際、先週は変動幅の拡大を伴いながらの大幅な上昇となっており、9週連続での上値切上りが示唆する強固な上昇トレンドは継続

    ◆なお、ストキャスティクスの高位張り付きはその後の急落に直結した事例もあり要注意。ただし、その場合はRSIの70超への上昇がセットになっているため、今後のRSIの上昇ペースに留意したい

    >>>今後6か月間の想定レンジ = 149.70~160.50⇒151.50~162.00

    月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記  

    長期(半年超~1年程度)の方向性:下落へのトレンド反転を回避。上昇再開が本格化へ

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    □2022年の「3カ月連続陰線後の長大陽線」と同様に「10月は長大陽線を形成 ⇒『20ヶ月MAを大幅に超過する水準を回復』」した(ストキャスティクスにも底打ち/上昇サイン点灯)

    =>>>(過去35年間終値ベースでは僅か3ヶ月しか上回ったことが無い)152円超の水準を維持して11月を迎えたため『超長期上昇トレンドの継続』が確認されたといえよう

    >>> 今後1年間の想定レンジ = 149.70~163.80 ⇒151.50~164.55 =

    <ファンダメンタルズ分析判断>

    先週の日米金融市場の変化(下表右端)

    米国:米金利は直近2ヶ月の上昇傾向維持、株式は大幅に反落

    日本:日銀のタカ派姿勢 ⇒金利は上昇、米株連動で株式は反落

    ◇USD円:米金利に連動するUSD指数続伸を助けに、USD円も上昇

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    米債利回り:概ね予想比堅調だった経済指標・「利下げを急がない」とのFRB議長発言・「トランプ次期政権の政策」による『インフレ高進懸念』等を材料に再び金利上昇に拍車。前週比で大幅に上昇

    > 2年債利回り:11/8  4.252% ⇒ 11/15  4.252%(前週比 +0.056%上昇

    >10年債利回り:11/8  4.306% ⇒ 11/15  4.306%(前週比 +0.139%上昇)

    =>10年-2年の利回り差は「+0.137%と前週(+0.054%)比で大幅に拡大」(下図)

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    金融市場では選挙前から既に相当程度先取り(織り込み)が進んでいた観がありますが、来年1月20日に発足予定のトランプ第2次政権は、米上下院でも共和党が多数派を獲得し第1次と同じく米大統領と米上下両院の過半数を共和党が占める「トリプルレッド」が先週確定しました。

    これを受け、金融市場では「トランプ氏の選挙公約が実現しやすい環境」を先取りする格好で<(①米金利上昇、②USD高、③米株高という)所謂「トランプトレード」が本格化するとの期待>も高まっていたように思われます。しかしながら、既に「過度な期待と織り込み」がかなり先行していたため、③には(週初の高値更新の後)早くも材料出尽くし的な調整売り(反落)が顕現化しました。(先週1週間:S&P500は前週の+4.7%から▲2.1%へ・ナスダックは同+5.7%から▲3.2%へと其々急反落)

    因みに、米株市場については先週の当欄(ご質問への回答)で以下のような見解を示しました。

    (前略)このように米国株式市場では、NYダウ、S&P500指数、ナスダック総合指数の3主要指数が揃って最高値を更新し、前大統領の4年ぶりの返り咲きを歓迎する形となっています。法人税減税や規制緩和など企業寄りの政策を期待した買いが膨らんだとみられますが、その持続性についてはかなり疑問符がつくのではないかと思料します。より具体的に申し上げれば『今の株式市場が、第一次トランプ政権当時の相場の再現を期待しているとすれば、今後、失望する可能性が高い』ということです。

    第一次トランプ政権1年目の2017年、トランプ政権は減税策の成立を優先しました。一方、中国との通商摩擦が表面化したのは、2017年12月に10年で1.5兆USD規模の大型減税が成立した後で、2018年に入ってからのことでした。

    米国株式は、2017年こそ減税期待を背景に調整らしい調整が殆どない『安定した上昇相場』が続きました(2017年のS&P500の年間騰落率は+19.4% / VIX指数の平均値は11.1)が、2018年に入ると、中国との通商摩擦が攪乱要因となり『変動率の高い相場』に転じました(2018年のS&P500指数の年間騰落率は▲6.2% / VIX指数の平均値は16.6と其々大きく悪化)。

    一方、今回トランプ減税の恒久化や法人税減税の財源の一部は、関税引き上げによる歳入増加分が充当される計画となっています。つまり、減税策と関税引き上げは、同時にセットとして進められることになり、プラス材料(の減税策)が先行した2017年とは状況が大きく異なるのです。

    確かに、第二次トランプ政権が発足するのは来年1月20日とかなり先の話になりますので、それまで(≒2024年内)は期待先行で現在の活況が継続する可能性はあります。しかしながら、来年の新政権発足以降については、プラス材料とマイナス材料が入れ替わり立ち替わり出てくるようになり、金融資本市場はその都度、大きく上・下に振れる非常にボラティリティの高い展開となるリスクがあります。

    現在米株市場が活況にあるからこそ、このリスクは常に念頭に置くべきだと考えています。

    また、先週はこうした見方に加えて、先週も着実に進展した「①米金利上昇」が逆風となったほか、次々に発表されるトランプ新政権の「閣僚メンバー指名に関する不確実性」も反落の要因となったようです。

    なお、先週末もこの急反落に関する質問がありましたので、以下簡単にお答え致します。 米大統領選の結果が判明した11/4週のグローバル株式市場では「減税など企業寄りの政策期待から、米国株が大きく買われた」一方、「欧州やアジアでは関税引き上げ策の悪影響などが懸念され下落」する市場も少なくなかったため、パフォーマンスのバラツキが目立ちました。そして、ご案内の通り先週は米国株も反落してほぼ全面安となりました。

    既述との重複もありますが、先週、米国株が大きく反落した主たる要因は以下3点が考えられます。

    ➊(良好な経済指標もあり)FRBの利下げ期待が後退し、長期金利が上昇したこと

    ➋PERなどからの割高感が一段と強まり、高値警戒感による利益確定売りが膨らんだこと

    ➌関税引き上げなどの保護主義政策が、結局、米国企業にも不利益をもたらすとの見方が強まったこと

    =>>>米国が関税を引き上げれば、相手国は報復関税や輸入規制強化などの対抗措置を採るため、米国企業も不利益を被ることになる

    =>>>先週は、通商政策で対中国強硬派とされる閣僚・要職の人事が発表されたことで、その悪影響が改めて意識された可能性あり

    =>>>既述の通り、第一次トランプ政権では「1年目の2017年は減税策が優先され、米中通商摩擦が表面化したのは、2018年に入ってから」でした。今回は、減税策の財源に関税引き上げによる歳入を充てることが想定されており「減税と関税引き上げは、来年1月の政権発足直後から、同時に進められる可能性が高い」ことも早目の利益確定売りに繋がったようです

    >>急反落の理由はあくまでも推測に過ぎませんが、先週も指摘したように「変動率の非常に高いトランプ2.0相場が既に始まっている」ことはほぼ間違いないと思われます。

    順番が前後しましたが、トランプトレード「①米金利上昇、②USD高」については我々の想定に沿う格好で順調に進展しています。また、その要因は色々とありますが、元々「①と②の相関は非常に高い」ことが知られています。では、それぞれの現状について以下にまとめます。

    ①先週末11/15の米10年債利回りは、一時、6月初以来となる4.5%を突破

    =>>>ここ数週指摘しているように「インフレ再燃/高進、米連邦政府債務の拡大、FRBによる利下げペース減速」など、トランプ氏の選挙公約が実現しやすい環境を先取りした米国債利回りの上昇

    =>>>11/15発表の強い経済指標:

    ○10月の小売売上高は前月比+0.4%増(自動車や電化製品の堅調な売り上げが追い風/予想の+0.3%増を上回ったうえ、9月分は当初の+0.4%増から+0.8%増に上方改定

    ○10月の米輸入物価指数は前月比+0.3%上昇予想は▲0.1%下落で予想外の上昇、インフレ抑制が進展していないことを改めて示唆)

    =>>>前日11/14のパウエルFRB議長の発言:

    ○「米経済は極めて良好であり労働市場の状況は底堅い・FRBは利下げを急ぐ必要はない」

    来月以降の『積極的な利下げ予想』の後退につながった

    =>>>FF金利先物市場の利下げ織り込み度合い:

    ○「FRBが12月のFOMCで金利を据え置く」との見方が強まり、その度合いは約42%に上昇(1ヶ月前の時点では約14%)。「2025年の年間利下げ期待」も大幅に後退

    ➁主要通貨に対するUSD指数は①に伴ってこの2か月で順調に上昇

    =>>>主要通貨に対するUSD指数の推移:

    (11/15こそ若干軟化も)今週は約1.65%上昇し、週間ベースでは9月以来の大幅上昇

    ⇒11/14には4カ月ぶり高値の106.98に上昇9月末:100.71 >> 10月末:103.86⇒月間で+3.1% >> 11/14 106.98 ⇒ 月間で+2.7%

    今回のUSD指数上昇にはドイツ経済の低迷を反映したEUR安要因も加わっており、上昇に勢いあり

    なお、上記の進むUSD高(円安)に対しては市場介入を懸念して円高へのトレンド転換予想もあるようですが、これまでも繰り返し主張してきた通り、我々は「日本単独の市場介入だけではトレンド転換は困難」だと考えています。(日銀の追加利上げ要因は米利下げ観測の後退によってほぼ相殺

    USD円についていえば「日米の実質金利差が最大の決定要因であり、USD指数に沿ってトレンドは決まる」との認識に全く変化はありません。従って、今後も市場介入(円買い)があったとしても、USD指数が下落トレンドに変わらない限り円安トレンドの反転は望めないでしょう。

    当然のことですが、USD指数が反落に転じるとすれば、上述の米金利低下がより顕現化し始めてからということになると考えています。>(以上、Weekly Report:5/6分より抜粋)

    お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。

    <(※):ジーフィット株式会社は10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名を変更しました。>

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