―Executive Summary― 目次1.甲辰の2024年、何が起こるのか2.2023年の振り返り=ドル円は上昇トレンド続くも、年末に […]
為替相場の変動に短期的には経済、政治、地政学リスクなどいろいろな要因が絡んでいますが、中長期トレンドは実需が大きな影響を与えているとの認識が一般的です。その実需の変化に大きな役割を果たしているのが貿易収支です。
貿易収支
輸出額から輸入額を差し引いた額を表します。輸出額が輸入額を上回る輸出超過を貿易黒字、逆に輸入超過を貿易赤字といいます。貿易収支は内外の景気動向および外国為替相場の値動きで変動します。
貿易収支と為替
貿易収支が黒字の国は、外貨を自国通貨に交換する需要が高い(外貨売り・自国通貨買いが継続的に発生する)ため、一般にその通貨は高くなります。一方、貿易収支が赤字の国は、自国通貨を外貨に交換する需要が高いため、その通貨は安くなります。
また、貿易黒字が長期にわたって拡大し、大量の商品が貿易相手国に流れ込むと、相手国の産業に深刻な打撃を与えます。そのような場合、貿易黒字を縮小するため、輸出が好調な国に対する、通貨の引上げ要請が強まることがあります。1985年のプラザ合意による円レートの大幅な引上げや、最近では、中国の通貨・人民元の引上げ圧力などが良い例です。また、貿易黒字の拡大が続くと、貿易摩擦と通貨引上げ圧力を先取りした投機的な買いを呼び、通貨高が加速することもあります。
為替レート変化の貿易収支への影響
為替レートの変化は、輸出数量・輸入数量に影響を与えるが、この影響が現れるまでには時間がかかることが知られています。一般的に輸出や輸入の契約は取引の数ヶ月前に行われており、為替レートの変化は数量にすぐさま影響を与えません。つまり円安になっても輸出・輸入数量はすぐには変化しません。他方、輸入価格は上昇するので貿易収支は悪化します。しばらくすると為替レート変化後の相対価格で輸出・輸入契約を行うことになるので、貿易収支が徐々に改善していきます。
日本の貿易赤字
日本の1月貿易収支は3兆1818億円の赤字と、単月として比較可能な1979年以降で最大の赤字幅となりました。2022年の貿易収支がやはり過去最大の赤字を記録して大きな話題を呼びました。日本の貿易赤字は2年連続で、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰に円安が重なり、輸入額が大きく膨らみました。
かつて日本は「輸出大国」として巨額の貿易黒字を積み上げ、米国との間で激しい貿易摩擦が生じたこともありました。黒字を稼いだ自動車や電機は海外生産が進んだ一方で、2011年の東日本大震災を契機とした火力発電回帰でLNGや原油の輸入が急増し、資源価格と為替次第で貿易赤字が膨らむ苦しい環境に立たされています。
貿易赤字が円安加速の要因に
貿易赤字が続くと、円安に拍車をかける要因にもなります。
日本はエネルギーや食料品の多くを輸入に頼っていますが、その代金はドルでの支払いが中心です。つまり、円安が進めば進むほど、輸入代金を支払うためにより多くの円をドルに両替しなければなりません。円がよりたくさん市場に出ることになり、そのことがさらなる円安につながるのです。円安の時に輸入すれば貿易赤字になりやすいですが、円安そのものを加速させることにもなるのです。これは日本経済が今抱えている構造的な課題とも言えるので、どう向き合っていくか考えていかなければなりません。
本記事は2023年4月15日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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