―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は2月16日週に3.01円と、その前の週の5.39円から縮小した。前週比では 2.45 円上昇し、反発。年初来では1.0%安と、前週の2.6%安から下げ幅を狭めた。高市首相の会見や市場予想より強い米指標に反応し、一時155.64円と約2週間ぶりの高値をつけた。もっとも、20日に米連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠としたトランプ政権の関税措置に違憲判決を下したため、上げ幅を縮小した。
- 米連邦最高裁判所は2月20日、トランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に発動した関税措置に違憲判決を下した。トランプ大統領は同日に1974年通商法122条を根拠としたグローバル一律10%関税を発表、直後に同法の上限である15%に引き上げ。同法の措置も150日と期間が決まっており、米議会の承認なしでは延長できず、1974年通商法301条などへの移行が見込まれる。ベッセント財務長官は違憲判決後も歳入見通しは変わらないと強調するが、不透明性は高い。また、欧州連合(EU)は、トランプ政権と合意した貿易協定の批准手続きを凍結。インドは通商交渉団の訪米の見送りを決定するなど、米国との関係に影響を及ぼしつつある。海外勢との摩擦は、米国債の売却やそれに伴う米債利回り上昇でドル安、すなわちドル資産離れを起こしかねず、歳入の動向だけでなく、各国の対応を見極める必要がある。
- 高市首相は、施政方針演説で「責任ある積極財政」に基づき市場の信認確保と財政規律の両立を掲げ、債務残高対GDP比の安定的低下を目指す姿勢を示した。食料品の2年間の消費税減税は超党派で検討を加速し、夏前の中間取りまとめと法案提出を視野に入れる方針。また、投資促進を強調し、過度な緊縮志向からの転換を明確にした。片山財務相は、財政演説で「歳出・歳入両面で『強い経済』を支える財政構造への転換を図る」方針を表明。市場は引き続き、経済・財政運営をにらみながら推移しそうだ。その他、2月26日には、高田審議委員、3月2日には氷見野副総裁の発言を予定する。トランプ政権の関税政策に不確実性が立ち込めてきたが、特に氷見野氏が春の利上げへ向けた地ならしを行うかがドル円の方向性のカギを握りそうだ。
- ドル円のテクニカルは、中立寄りにシフトした。前週は1月27日の安値154.09円を下抜けられず、戻り局面では1月14日高値と1月27日安値の半値戻し155.59円、さらに50日移動平均線155.29円を一時的に上回った。ただ、週末の終値ではこれらの水準を維持できなかった。それでも、38.2%戻しの154.75円を上回り、155.08円で引けており、買い戻しの余力は残る。RSI(14日)は49.77と中立圏にあり、ここから上にも下にも振れやすい位置にある。
- 2月23日週の主な経済指標をみると、24日は米2月消費者信頼感指数、25日に日本1月企業サービス価格指数、豪1月CPI、26日に米新規失業保険申請件数、27日に東京都区部2月CPIと1月鉱工業生産、米1月生産者物価指数を予定する。
- 3月2日週は、雇用関連を中心に重要指標が目白押しだ。2日に中国2月RatingDog製造業PMI、ユーロ・独・米の2月製造業PMI改定値、米2月ISM製造業景気指数、3日は日本1月失業率と有効求人倍率、10-12月期四半期法人企業統計、ユーロ圏2月消費者物価指数・速報値が控える。4日は豪Q4GDP、中国2月RatingDogサービス業PMIと2月製造業PMI、ユーロ圏・独・米のサービス業と総合PMI改定値、米2月ADP全国雇用者数、米2月ISM非製造業景気指数、5日は米2月チャレンジャー人員削減予定数と米新規失業保険申請件数、米Q4単位労働コストと労働生産性、米1月輸入物価、6日には米2月雇用統計を予定する。
- その他、政府・中銀関連では、23日に欧州議会の緊急会合(米国との貿易合意の批准手続きに関して)、ラガルドECB総裁とウォラーFRB理事の発言、24日は米2年債入札、ウォラーFRB理事やクックFRB理事、ボストン連銀総裁、シカゴ連銀総裁、アトランタ連銀総裁の発言、トランプ大統領の一般教書演説を予定する。25日は米5年債入札、リッチモンド連銀総裁とセントルイス連銀総裁の発言、エヌビディアの決算発表、26日は日銀「市場調節に関する意見交換会」、高田審議委員の発言、米7年債入札、ボウマンFRB副議長の発言、27日は日銀国債買い入れ日程の公表が控える。
- 3月2日週は2日に氷見野副総裁の発言、3日にミネアポリス連銀総裁の発言、5日にラガルドECB総裁の発言、米地区連銀報告の公表、6日にクリーブランド連銀総裁の発言を予定する。
- 以上を踏まえ、今後2週間の上値は一目均衡表の上限が近い157.50円、下値は200日指数平滑移動平均線が近い152.50円と見込む。
1.ドル円振り返り=強い米指標と高市発言を支えに、約2週間ぶりの155円台を回復
【 2月16~ 20日のドル円レンジ:152.63~155.64円】
ドル円の変動幅は2月16日週に3.01円と、その前の週の5.39円から縮小した。前週比では 2.45 円上昇し、反発。年初来では1.0%安と、前週の2.6%安から下げ幅を狭めた。高市首相の会見や市場予想より強い米指標に反応し、一時155.64円と約2週間ぶりの高値をつけた。もっとも、20日に米連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠としたトランプ政権の関税措置に違憲判決を下したため、上げ幅を縮小した。
16日のドル円は、買い戻し。日本2025年Q4実質GDP成長率・速報値が市場予想以下となり、ドル円は買いが先行した。高市首相と植田日銀総裁の会談後、植田氏は高市氏から特に要望はなかったと発言も、一時153.64円まで本日高値を更新。その後は、米国が休場とあって動意に乏しく153円前半でのもみ合いに終始した。
17日のドル円は、堅調に推移。東京時間に買いが先行し、前日高値を超え153.70円台へ上昇した。上値では押し返され、英1月失業率の予想外の上振れを受けポンド円が下落するなか、ドル円も153円を割り込み、一時152.70円まで本日安値を更新。もっとも、NY時間に発表された米1月NY連銀製造業景気指数が強含んだため、買い戻しへ転じた。バーFRB副議長やサンフランシスコ連銀総裁がAIブームによる生産性向上で中立金利が上昇する可能性に言及した結果、米利下げ期待が後退したことも、ドル買い材料。米国とイランの間で再開した核協議で、イラン外相が進展について言及し米と主要原則で大筋合意する方針を示した影響も重なり、一時153.93円まで本日高値をつけた。2月11日の米1月雇用統計発表直後に乱高下した後の戻り高値153.96円の手前では利益確定の売りが優勢となり、153円前半へ戻してNY時間を終えた。
18日のドル円は、買い戻し。トランプ大統領が日本の対米投資1号案件を発表したため、東京時間は投資に絡むドル買い・円売りフローが意識され、ドル円は買いでスタートした。国際通貨基金が日本時間の朝、2026年の日本経済に関する審査(対日4条協議)の終了に当たって会見を開き、日銀の追加利上げについて今年2回、来年1回の合計3回と予想しているとの発表も、ドル円の買いを後押し。特別国会が召集され、自民党の高市総裁が第105代内閣総理大臣に選出されるなか、ロンドン時間も買いの流れが続き、一時153.80円台へ上昇した。高市氏が会見で「責任ある積極財政」を強調すると、その直後に米12月住宅着工件数や耐久財受注が強い結果となったことも重なり、154円台を回復。1月FOMC議事要旨では、複数の参加者がインフレ次第で利上げの可能性について言及するなどタカ派的な内容だったこともあり、引けまで買いの流れが続き、一時154.87円まで本日高値を更新した。
19日、ドル円は買いの流れが継続。日経平均の上昇も重なり、東京時間の序盤に155円台を回復し、一時は155.34円まで本日高値を更新した。ただし、同水準では1月14日高値と1月27日安値の半値戻し155.59円が意識され、失速。NY時間に発表された米新規失業保険申請件数や米2月フィラデルフィア連銀製造業景気指数が市場予想より強い結果だったが、上値は重くなった。
20日、ドル円は乱高下。東京時間では1月全国CPIが市場予想以下だったため、ドル円は買いの流れが続いた。155円割れでは押し目を拾われ、ロンドン時間入りに掛け一時155.64円まで週の高値を更新。NY時間に入っても高値圏で推移し、米Q4実質GDP成長率・速報値が市場予想より弱くとも、米12月PCE価格指数の強含みに反応し、155円台を維持した。しかし、米連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とした関税措置について違憲判決を下し、ドル円は急落。一時154.72円まで本日安値を更新しつつ、引けにかけては155円台へ戻した。
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