―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は2025年12月22日週に2.16円、同年12月29日週に1.26円となった。2025年としては、0.3%安で取引を終え、かろうじて変動相場制導入以来で初めてとなる5年連続の陽線引けを回避した。日銀金融政策決定会合後にドル円は157.79円まで上昇したが、当該週は片山財務相が円安けん制として「フリーハンド」と言及した結果、介入警戒感から上げ幅を縮小する動きに。もっとも、155.56円まで下落するにとどまり、下値も堅い。むしろ、年末年始は米Q3実質GDP速報値や米新規失業保険申請件数の強含みもあって、一時157円を回復する場面もみられた。
- トランプ政権が1月3日にベネズエラに軍事作戦を実施、ニコラス・マドゥロ大統領を拘束した。国際法上の議論は残るものの、米国は1989-90年の「ノリエガ事件」と同様に、マドゥロ大統領を「麻薬テロ」などの容疑で訴追する構えを見せている。本件を受け、各メディアなどはトランプ政権が次にキューバやコロンビア、メキシコなどの政権転覆を狙うとの指摘が聞かれるが、むしろ米中関係の観点で議論すべきだろう。
- 中国はベネズエラを「全天候型戦略的パートナー」と位置づけ、1月3日にトランプ政権がベネズエラを攻撃する直前には、中国特使がマドゥロ大統領と会談し、関係強化をアピールしていた。しかしトランプ政権の軍事作戦により、中国の対ベネズエラ戦略が覆され、米中間で緊張が走りかねない。足元でベネズエラ攻撃をめぐる為替への影響は限定的だが、中国の対応次第では、リスク選好度の低下から、ドル円を押し下げうる。
- 今週は、米12月雇用統計を始め米重要指標が目白押しだ。米12月雇用統計については、米新規失業保険申請件数や全米リアル求人広告動向指数を踏まえれば、前月から改善が見込まれよう。特に失業率は、11月の4.6%から4.5%へ低下が予想される。
- 日銀は、12月に開いた金融政策決定会合で0.25%の追加利上げを決定。当時の「主な意見」では、中立金利、実質金利、利上げペース、為替、長期金利の5つの論点が従来より踏み込んで議論されていた。実質金利の低さが円安や長期金利上昇の要因とされ、為替動向が利上げ判断のカギとなった様子が浮かび上がる。長期金利には財政への懸念が影響しているとの示唆もあり、日銀は後手に回るリスク回避の姿勢を強めたと言えよう。早ければ、4月の追加利上げシナリオが想定される。
- ドル円のテクニカルは非常に強い地合いから後退し、一目均衡表では三役好転が消滅した。2025年10月6日、並びに20、21日の安値を結んだ高市総裁誕生後のトレンドラインで、上げ渋りをみせている。一方で、21日移動平均線はローソク足の実体部で維持されており、下値も堅い。
- 1月5日週の経済指標は、5日に中国12月RatingDogサービス業PMI、米12月ISM製造業景気指数、6日は独12月消費者物価指数(CPI)速報値、ユーロ圏を始め独、米の総合PMI改定値(サービス業含む)を予定する。7日は豪11月CPI、ユーロ圏12月消費者物価指数・速報値、米12月ADP全国雇用者数、米12月ISM非製造業景気指数、米11月雇用動態調査(JOLTS)、8日は日本11月実質賃金、米12月チャレンジャー人員削減予定数、米新規失業保険申請件数が発表される。9日は中国12月CPIと生産者物価指数(PPI)、米12月雇用統計、米1月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値が控える。
- その他、政府・中銀関連では、6日にリッチモンド連銀総裁の発言、7日にボウマンFRB副議長の発言、8日に日銀支店長会議、地域経済報告(さくらリポート)、日本30年利付国債入札、9日にリッチモンド連銀総裁の発言を予定する。
- 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の158.50円、下値は過去2週間の安値付近の155.50円と見込む。
1.ドル円振り返り=片山財務相が円安けん制で日銀会合後の上げ幅を一時打ち消しも、米指標で買い戻し
【2025年12月22日~2026年1月2日のドル円レンジ:155.56~157.79円】
ドル円の変動幅は2025年12月22日週に2.16円、同年12月29日週に1.26円となった。2025年としては、0.3%安で取引を終え、かろうじて変動相場制導入以来で初めてとなる5年連続の陽線引けを回避した。日銀金融政策決定会合後にドル円は157.79円まで上昇したが、当該週は片山財務相が円安けん制として「フリーハンド」と言及した結果、介入警戒感から上げ幅を縮小する動きに。もっとも、155.56円まで下落するにとどまり、下値も堅い。むしろ、年末年始は米Q3実質GDP速報値や米新規失業保険申請件数の強含みもあって、一時157円を回復する場面もみられた。
22日のドル円は、もみ合いを経て売り優勢。前週末の日銀金融政策決定会合後のドル円急落を経て、東京時間とロンドン時間は材料不足のところ、157円前半から半ばでの推移を続けた。NY時間には、157円割れ。片山財務相が11月22日に続き円安に対し「断固たる措置を講じる」と述べたほか、今回は新たなキーワードとして「フリーハンド」に言及、ドル円を一時156.80円台へ押し下げた。一旦は発言前の水準である157円前半へ戻したものの、12月19日に続き日米財務相共同声明にも触れていたため、日銀利上げ後に介入の了解を得たとの印象を与え、上値は重くなり、NY時間には売りが再燃。一時156.71円まで本日安値をつけた。
23日のドル円は、続落。前日に続き、片山財務相が閣議後の記者会見で、前日のブルームバーグ・インタビューに続き、足元の為替動向について「投機的」、「日米財務相共同声明に沿って行き過ぎた動きには対応をとる」、「私はフリーハンド」などと発言し、ドル円の売りを誘った。本日は、日経新聞が高市首相のインタビューを掲載し「無責任な減税しない」方針で、国債発行も抑えるなどと発言したと伝え、下落を後押し。ドル円は、ロンドン時間に一時155.65円まで本日安値を更新、日銀金融政策決定会合後の植田総裁会見後の上昇を相殺した。もっとも、その後は下値も限定的で、米Q3実質GDO成長率・速報値の強含みもあり、156円台を回復してNY時間を終えた。
24日、ドル円は軟調な推移を継続。ドル円は東京時間の序盤に、一時155.56円まで本日安値を更新した。しかし、クリスマスイブとあってロンドン時間とNY時間のマーケットが薄くなることが予想されるなか、動意に乏しい。NY時間には、米新規失業保険申請件数が市場予想より強い内容で、156円台へ戻したが、買いの流れも限定的だった。
25日、ドル円は小動き。植田総裁が講演を行ったほか、高市首相が2026年3月の訪米へ意欲をみせたが、特に反応せず、もみ合いが続いた。
26日、ドル円は買い戻し。12月東京都区部消費者物価指数(CPI)が生鮮除くコア含め下振れしたため、追加利上げの期待が後退しドル円の上昇につながり、156円半ばをトライする動きをみせた。来年度国債発行計画につき超長期債が減額となり10年債の増額見送りと報じられると、財政悪化懸念の後退から、ロンドン時間が休場もあって上昇は一服。もっとも、NY時間に買いが再燃し、一時156.73円まで本日高値を更新し、156円台半ばで週を終えた。
29日、ドル円はもみ合い。東京時間の序盤に発表された12月会合の日銀主な意見が想定以上にタカ派的な内容で、ドル円は一時156.20円台へ下落した。その後は買い戻されつつ、年末の薄いマーケットで156円前半を中心として小動き。NY時間に再度売りが入ったが、155.92円まで本日安値を更新するにとどまった。
30日も、ドル円は小動き。高市首相が戦略的財政出動で好循環生み出す強い経済の構築を目指す方針を打ち出したものの、反応は限定的でむしろロンドン時間にかけ156円割れを迎えた。一時は、155.74円まで本日安値を更新。NY時間に入ると買い戻され、一時156.57円まで本日高値をつけた。12月のFOMC議事要旨が公表され当面の据え置きを主張する見解を確認した一方、「大半はいずれ追加利下げが適切になる可能性が高い」と判断したこともあって、影響は限定的だった。
31日は、ドル円はやや買い優勢。東京時間からゆるやかに上昇を描き、NY時間には米新規失業保険申請件数が市場予想以下にとどまると、一時156.99円まで本日高値をつけた。もっとも、大晦日とあって買いの勢いも乏しく、157円手前で押し返された。
1月2日は、ドル円買い戻し継続。材料不足のなか、ドル円はNY時間入りにかけ一時157円まで本日高値を更新した。米12月S&Pグローバル製造業PMI改定値が発表されたが、市場予想と一致し影響は限定的だった。
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